NTTデータグローバルソリューションズ

SAPソリューションをクラウドで利用するには


SAPは日本においても1992年のSAP R/3の発表以来、ERPの分野をリードしてきました。国際会計基準や各国の税制、多くの言語に対応し、豊富な実績を有する同社のERPは世界中の企業に採用されています。SAP ERPを活用する企業はこれまで、パッケージ型のソリューションをオンプレミス環境に導入していました。しかし近年、クラウド型ERPに注目が集まっています。

SAPは従来型ERP製品の保守サービスを2025年に終了すると発表しているため、既存システムに代わるシステムの導入が急務になっており、SAPユーザーの間では「2025年問題」と呼ばれています。また経済産業省は2018年に発行したレポート『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』で、SAPの保守サービスの終了を既存システムの老朽化、有識者の大量退職と合わせて、日本におけるデジタルトランスフォーメーションを阻む要因として問題視し、迅速かつ円滑な対応を求めています。

2025年問題は、持続可能な業務システムへの刷新の好機

SAPはサポートを終了する従来製品に代わる最新バージョンのERP「SAP S/4HANA」への移行を推奨しています。オンプレミス版のSAP S/4HANAを導入すれば、2025年問題はクリアできると考える人もいるかもしれません。

しかしいまや、自動車メーカーがサービス産業への脱皮を図り、農業などでもAIやIoTなどが駆使される時代です。どの業種・業界の企業も、従来のビジネスモデルのみに固執していては生き残れません。自社のビジネスを持続可能なものにしていく上で、定型業務を効率よくこなすのに向くオンプレミスのソリューションは、最適解とはならない可能性もあります。そこで、ビジネスモデルの変化に応じて業務プロセスを取捨選択できるクラウド型ERPに活路を見出す企業が現れています。経済産業省も前述したレポートの中で、2025年の崖は業務システムのクラウド化を促す絶好の機会にもなり得ると指摘しています。

SAPのERPをクラウドで利用する2つの方法

SAPのERP製品をクラウドで利用する方法は、大きく分けて2つあります。1つは、IaaS上に導入して運用する方法。もう1つは、SaaSとして提供される「SAP S/4HANA Cloud」もしくは中堅・中小企業やグループ展開向けの「SAP Business ByDesign」を利用する方法です。

IaaS上への導入は、一般的にオンプレミスで構成されているサーバーを仮想マシンとしてIaaSサービス上に構築して運用する形態です。主要なIaaSである「AWS(Amazon Web Services)」、「Microsoft Azure」、「Google Cloud Platform」などがSAPソリューションへの対応強化を表明しています。インフラはクラウドサービスベンダーが運用管理を行う一方で、ERPシステムの運用全体はユーザー側で管理できます。また、機能追加などカスタマイズの自由度が高い点も特長です。ただし特殊業務への対応や自社の業務プロセスに合った環境を構築するには相応の導入コスト、労力と期間を要します。また、導入と運用にはアプリケーション環境やインフラ、セキュリティに関する専門的な知識も必要です。

一方、SaaSとして提供されるSAP S/4HANA Cloudを利用すれば、導入から運用まで低コストかつ迅速に行うことができます。さらに、利用に応じた月額利用料金から予算の算出が容易なため、短期利用や新規事業の立ち上げなどにも向いています。そしてインフラ管理やセキュリティ対策、定期メンテナンスはSAPが行うため、圧倒的に手間いらず。四半期ごとに行われる機能アップデートにより、最新のテクノロジーを利用できる点もメリットです。

ただしSAP S/4HANA Cloudの場合、基本的に標準機能で運用していく前提となっており、IaaSでの運用に比べるとカスタマイズ範囲は極めて限定的です。独自の業務プロセスにこだわる企業にとってこの点はボトルネックかもしれません。しかしSAPが2019年7月に公開したプレスリリースによると、SAP S/4HANA Cloudを導入した企業は全世界で1万1,500社を超え、日本でも大企業を中心に採用しており、標準機能中心の活用を進めています。

SAP Business ByDesignは、手ごろな価格で利用できるSaaS提供型ERPで、導入期間も平均3~4カ月です。会計管理、購買管理、生産管理、販売・在庫管理などの業務機能に加え、36種類のビジネスシナリオも用意され、すぐに活用できる状態になっています。多言語・多通貨に対応し、19以上の国や地域の会計基準にも準拠しています。

業務プロセスから刷新するなら、SaaSの活用を視野に

SAP ERPのクラウド化にあたって最も重要なのは、2025年問題対応は単なるシステムの移行ではないと明確に意識することです。時代の要請に応える業務プロセスの再定義と、その実践に最も適した仕組みづくりのため、システム部門に経営者や現場も含めた全社を挙げた取り組みが何より大切です。現状の要求を吸い上げるだけでなく、将来に向けたビジネスプロセスをどのような業務システム上で実行すべきなのか、まっさらな視点から考え直す必要があります。

一見、カスタマイズできる範囲が広いIaaS運用の方が、効果的なシステムを構築できるように感じます。しかしプロセス自体の刷新に取り組むなら、SaaS型を採用した方がトータルでの効果が大きくなる可能性があります。SaaSで提供される機能には、社内だけで通用する常識にとらわれず、これまでにない視点から無駄を削ぎ落とし、ビジネスを効率化していくヒントが多く盛り込まれているからです。

サービスや方法論を活用して最適なクラウド化を実現

ここからは、SAP S/4HANAをクラウド上に導入することを例に、導入の流れを、「試す」「導入」「移行」「活用」の4ステップに分けて紹介します。

まず、「試す」ステップでは、ERPをクラウド上で利用できる機能を確認し、自社に導入する機能を選定します。この段階では、要件と機能の明確にするアセスメントや、実機での検証を行うPoC(Proof of Concept:概念実証)などを行います。具体的な利用シーンを想定したシナリオに沿って、機能や使い勝手の確認をしまう。システムを使用する現場担当者が実際に試すことで、導入すべき機能やメリットを現場視点で判断できます。現場を巻き込んで検討を進めると、業務プロセスの刷新が円滑に進められます。NTTデータGSLでは、S/4HANA 導入に向けたアセスメントとPoCのサービスを提供しております。

次は、「導入」のステップです。SAP S/4HANAを導入する際、過度にカスタマイズを加えると、多額のコストと時間が掛かってしまいます。そのため、システムで実行すべき業務フローや運用手順を正確に把握しておく必要があります。なお、SAPソリューションには「SAP Activate」という導入方法論が用意されています。さらに、標準テンプレート「SAP Best Practices」を活用すると、より短期間での導入が可能です。

既存のシステムがある場合には、「移行」のステップが必要になります。既存システムの要件がクラウドで実現できるか、社内からクラウドに接続する時のネットワーク・セキュリティや既存データとの統合など、さまざまな問題が出てきます。移行の方法論としては、新規に導入する「Greenfield」、テクニカルに移行する「Brownfield」、SNP社のツールを利用する「BLUEFIELD(TM)」などがあり、要件に応じて選択します。

最後に「活用」のステップです。クラウド型のERPでは、いま使っている機能にもバージョンアップによって仕様変更が発生する場合が多々あり、機能が使用不能になる可能性も出てきます。ただし、SAP S/4HANAでは、新機能リリースまでに移行期間が設けられているため、突然機能が使用できなくなることはありません。そのため自社の業務に生じる影響を事前に見極め、適切な対処を施しておくことが重要です。

ERPもクラウドでの利用が主流に

以上のように、SAPのERPソリューションにおいてもクラウドの活用はまずます主流になってきています。クラウドといっても、IaaS上に構築して運用する場合と、アプリケーション自体をクラウドサービスとして利用するSaaSのモデルがあり、要件や体制に応じて最適なERPのクラウドでの利用が可能になっています。どのような活用が最適化についての検討からNTTデータGSLではご支援をさせていただきます。

ページトップへ戻る

  • facebook
  • youtube