デジタルトランスフォーメーションとは?DXの定義や課題を解説
さまざまな企業が「デジタルトランスフォーメーション(以下 DX)」に向けた取り組みを進めている現代、DXが企業に大きな価値をもたらすと理解はしているものの、どのような変革をどの程度の期間進めるべきか具体的な対策が分からない、ゴール地点が見えない、などの声があります。
そこで本コラムでは、改めてデジタルトランスフォーメーションに焦点をあて、DXの定義や注目が高まっている理由、課題や対応策などをわかりやすくご紹介します。
INDEX
DXとは
デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)とは、簡単にいうと「進化し続けるテクノロジーで人々の生活をより豊かにするための変革」のことで、一般的には「Digital Transformation」の頭文字をとって「DX」とも呼ばれています。DXの内容は時代によって変化するもので厳密な定義はありません。
既存の価値観や枠組みにとらわれることなく、デジタル技術を用いてビジネス環境を根底から覆すような革新的なイノベーションをもたらすものとして期待されています。
DXの定義と変遷
次に、DXの定義と変遷について、以下の3点から見ていきましょう。
一つずつ解説していきます。
エリック・ストルターマン氏(2004年)
DXという言葉は2004年にスウェーデンのウメオ大学教授であるエリック・ストルターマン氏が提唱した概念といわれています。
エリック・ストルターマン氏は、DXを
「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」
と定義し、そのうえで、テクノロジーの発達により人類の生活を豊かにすること、そのためにアプローチの方法を編み出す必要がある、と主張しました。
マイケル・ウェイド氏(2010年代)
2010年代には、スイスのビジネススクールIMD(International Institute for Management Development)のマイケル・ウェイド教授らによってデジタル・ビジネス・トランスフォーメーションという概念が提唱されました。
同氏はDX分野の第一人者として目されており、DXを
「デジタル技術とデジタル・ビジネスモデルを用いて組織を変化させ、業績を改善すること」
と定義しました。マイケル・ウェイド氏の概念はDXと区別するために「ビジネス」をつけています。
経済産業省(2018年)
また、2018年に経済産業省が公表したDXの定義は以下のとおりです
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
日本国内の各企業においては、経済産業省が公表している定義に基づいてDXの取り組みが進められています。
DXへの注目が高まる3つの理由
次に、デジタルトランスフォーメーションが注目されている3つの理由について説明します。
一つずつ見ていきましょう。
ビジネス変化の加速
DXへの注目が高まっている理由の1点目としては、ビジネス変化の加速が挙げられます。
次々に新たな製品やサービス、ビジネスモデルが登場するなかで企業が時代に対応していくためには、DX推進が必要不可欠です。
デジタル技術の発展によって多様なデータが収集できるようになった現代、データを効果的に自社ビジネスに活かしながら競争力を向上させようと、各社でDXが推進されています。
レガシーシステムの老朽化
デジタルトランスフォーメーションへの注目が高まる理由の2点目は、レガシーシステムの老朽化です。
昨今国内ビジネスにおいては、メインフレームなどのレガシーシステムの老朽化やブラックボックス化などが課題とされています。実際に、一般社団法人日本情報システムユーザー協会(JUAS)の調査によると、「レガシーシステム」と化したITシステムが、自社のデジタル化の足かせになっている、と約7割の企業が回答しています。
また、当時活躍していた担当者が定年を迎え、退職が続いていることも課題の一つといえます。
このような背景から、老朽化したシステムの管理や業務効率化といった「守りのIT投資」が多くのIT投資の対象にされており、米国と比較すると国内では、新たな付加価値創出につながる「攻めのIT投資」はあまり見られませんでした。
しかし、新型コロナウイルス感染症感染拡大をきっかけとしたテレワークやリモートワークの推進に伴い、レガシーシステムから脱却・改善していかなければならないという機運が高まり、DXに注目が高まっています。
市場の求める内容・スピードアップ
デジタルトランスフォーメーションへの注目が高まる理由の3点目としては、市場の求める内容やスピードへの対応力強化の必要性が挙げられます。
日常的な購買活動からビジネス会議まで、多くの物事がデジタルに置き換わり、今まで以上にオンライン上での活動が増えるなかで、ビジネスにおいても物理的に必要とされていた時間や手間が削減され、大きく効率化が進んでいます。
これによりユーザーの興味やオンライン上の行動など、企業側はこれまで以上に多くのデータを取得できるようになった一方、ユーザーが企業に求める内容やスピードもより高レベルになってきています。
そのため、データ活用の方法や対応力、スピード力など、企業価値を高めるための努力の一環としても、時代のニーズに合わせたデジタル変革は必要です。
DXを実施するうえでの4つの課題
ここでは、デジタルトランスフォーメーションを実施するうえでの4つの課題について説明します。
詳しく見ていきましょう。
全体最適化実現のためのプラットフォームが存在しない
デジタルトランスフォーメーションを実施するうえでの課題の1点目は、全体最適化実現のためのプラットフォームが存在しないことです。
企業では一般的に組織や業務単位でシステムが独立しているため、データの統合ができない、一貫したデータとして分析ができない、などの課題を抱えがちです。
全体最適化のプラットフォームがないために、必要な時に必要な情報を得られないことは、企業におけるDXの課題の一つといえるでしょう。
老朽システムへの対応
デジタルトランスフォーメーションを実施するうえでの課題の2点目は、老朽システムへの対応です。
長年運用されブラックボックス化、または老朽化したシステムは、今や複雑な状況にあります。専任者の退職後は誰も手をつけられない、改修が困難、などの理由により、そもそもの管理も煩雑になりがちです。
老朽化したシステムへの対応策としては、既存の構造や考え方にとらわれることなく、システムの抜本的な見直しや、新しいシステムの導入を考えることも重要な観点といえるでしょう。
人材の不足
デジタルトランスフォーメーションを実施するうえでの課題の3点目は、人材不足です。
DXの実現にはIT人材が必要不可欠ですが、対応できる社員が不足していることが課題として挙げられています。そのおもな原因は、スキルが足りない、老朽化システム対応に人材が取られている、などです。
DX実現のためには、しっかりと体制を整えてから着実に推進することが重要なため、人材不足は深刻な課題といえます。
経営層の決断力
デジタルトランスフォーメーションを実施するうえでの課題の4点目は、経営層の決断力です。
企業経営層の多くはDXの必要性を理解しているものの、すべての企業がDX化に踏み切れるわけではありません。さまざまな事情から経営層が二の足を踏みがちで、DX化が思うように進まないといったケースも見受けられます。
自社のDXを推進しなければならないと理解しているものの、改善のために必要なシステム更新や設備投資へのコストが大きいため、直近の業績を保つためにDX推進を後回しにしがちなのです。
経営層がDX推進に対する決断を進めていくためには、DX推進に対する中長期的な必要性を理解するとともに、そのコストを経営計画に具体的に落とし込む必要があります。
DXの実現で求められるポジション
デジタルトランスフォーメーション推進を実現させるためには、以下の4つの役職が必要です。
それぞれのポジションについて解説します。
プロダクトマネージャー
デジタルトランスフォーメーション実現にはまず、プロダクトマネージャーが必要です。
プロダクトマネージャーはDX推進のプロジェクトにおいて、全体的な責任と最終的な決定権をもちます。
テクノロジーとして開発したものを商品やサービスとしてまとめるポジションであり、DX推進を成功へと導くために欠かせない存在です。文脈のなかでサービスや製品をどう進化させていくのか、目的を改めて整理し、時代にあった形に落とし込んでいきます。
コンサルタント
デジタルトランスフォーメーション実現にはコンサルタントも必要です。
コンサルタントは、DXを進めるためのシステムの基幹とその周辺を含めた領域全体の構想立案を行う役割です。
DX化に向けた企業の課題を抽出・分析し、問題解決に向けた具体的なソリューションを検討する役目を担っているため、DX化においてはコンサルタントの知識や提案が欠かせません。
デジタルテクノロジーアーキテクト
デジタルトランスフォーメーションの実現で求められるポジションの3つ目は、デジタルテクノロジーアーキテクトです。
インフラからアプリケーションまで幅広いソリューションのなかから、DXを進めるうえで企業ごとに最適な組み合わせによってシナジーを発揮できるよう構築・企画する役割です。
企業で利用されているシステム環境を理解しつつ、DX化に必要な要素を整理したうえでDXを推進します。また、DXに欠かせない有益なナレッジを獲得するために、アルゴリズムや統計などを活用したデータを分析・集約します。
エンジニア
デジタルトランスフォーメーションの実現には、エンジニアも欠かせません。
ITの基本知識を備えたエンジニアがDX専門知識も習得することで、デジタルビジネス視点や先端技術に精通した幅広い知識を持つようになり、DX推進の担当として主要な役割を担います。
DXを推進するうえで、IT技術だけでなくDX推進の担当としてビジネス面を理解し、それらをエンジニアリングに落とし込む柔軟さが求められるポジションです。
まとめ
本コラムでは、デジタルトランスフォーメーションについて解説しました。
老朽化したレガシーシステムの維持にとらわれると、進めるべきDXの対応が停滞します。また、老朽化・属人化したシステムの仕様を把握した人材が年齢とともに退職していくことも、企業の深刻な課題となり得るでしょう。
DXを推進するためには、全社的にDXのメリットや価値を共有できる環境を整備することが必要です。場合によっては、基幹システムの見直しや業務プロセスの効率化、全体最適化を実現することも必要になります。
自社の課題を整理し、自社にとって最適な形でDX化を進めていきましょう。
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