グローバル経営とは?グローバル経営を行う上での課題とその解決策をご紹介
日本企業の海外進出が当たり前となる中、様々な国や地域の文化や商慣習、また、法律に対応したグローバル経営が求められています。
今回のコラムでは、グローバル経営を行うための課題、そのような課題を解決するためのERPの活用方法について解説します。
グローバル経営が今、求められる理由
グローバル化やIT技術の進歩により、海外企業や市場をターゲットにビジネスを展開することは、もはや特別なことではありません。そして、世界の名目GDPに占める新興国、途上国のシェアは、2000年代半ば以降上昇を続けており、2018年には40%を超える水準に達するなど、「海外市場」の中身はますます多様化しています。先進国だけではなく、世界中の様々な国とのビジネスが活発化する中、このような国や地域の文化や商慣習、法律を理解することは必要不可欠といえます。つまり現在の経営者に求められるグローバル経営とは、世界の多様性に対応した経営判断を行うことです。
こうしたグローバル経営が求められるようになった背景には、日本企業の海外進出意欲の高まりがあります。1990 年代以降、多くの日本企業が製造業の拠点をアジアに移し、生産活動を開始し、近年においてもアジア向けの対外直接投資は拡大を続けています。日本貿易振興機構(JETRO)が2019年末に実施した調査では、全体の56%が、今後3年間で海外進出の拡大を図ると回答しており、特にベトナムやタイなどASEAN諸国に対する投資意欲が高まっています。
少子高齢化によって消費人口が減少し、日本国内の市場が成熟しつつある中で、積極的に海外の市場開拓、販路拡大を行い、成長を続ける海外市場を取り込むことが、日本の企業の生き残りにとってますます重要になりつつあります。
グローバル経営の課題
しかし、グローバル経営を円滑に進めるのは容易なことではありません。子会社やグループ企業を含め、自社の経営活動が行われている全ての国や地域の情報を、同じ視点で管理することが必要ですが、世界中の拠点から本社に報告される情報の粒度や形式が異なれば、それらを比較し、集計することは非常に困難です。売上や原価の管理において、ある拠点では発生主義、また別の拠点では実現主義を採用する、といったように計上や原価計算のルールが異なれば、的確な経営管理を行うことはできません。
グローバル経営には、会計管理を始め、経営管理の仕組みを一元化することが重要です。また、一元管理するだけではなく、情報をタイムリーに収集し、共有する仕組みも欠かせません。会計基準を統一したとしても、例えば決算のデータが出てくるスピードが拠点ごとにバラバラであれば、正確な分析を行うことができません。
そして、子会社から報告されるデータをまとめ、本社に報告するのに数カ月の時間を要していては、変化のスピードがますます速くなっている現在のビジネスには対応できません。一元化に加えて、タイムリーに情報を把握することがグローバル経営には必要です。情報をタイムリーに一元管理する仕組みを作ることは、会計情報の透明性を確保するという意味でも重要です。
子会社やグループ企業を管理するためのルールやプロセスを十分に整備しないまま、M&Aやグローバル化を進め、規模の拡大を優先してしまえば、不適切会計が発生するリスクが高まります。また、子会社任せのどんぶり勘定では、今日の企業経営に求められるコンプライアンス水準を満たすことは不可能でしょう。
さらに、様々なバックグラウンドを持つ人々が働く企業にとっては、人事制度の策定にも十分な配慮が必要です。宗教や文化が異なる人々の力を引き出すためには、公平な人事制度の整備も、グローバル経営の課題の一つといえます。
柔軟なERP運用で課題を解決
このような課題を解決し、リアルタイム経営を実現するための手段として、SAP S/4HANAをはじめとするERPを導入することが考えられます。
グローバル・シングル・インスタンス(Global Single Instance)、つまり、全拠点を一つの組織と見立て、ERPを構築することができれば、経営判断に必要な情報をリアルタイムに集計でき、迅速な経営上の意思決定が可能になります。また、アプリケーションのバージョンアップ対応などの保守作業を一元化することもできるため、グループ全体のIT管理の効率化にもつながります。
一方で、本社とは異なる業務を行っている海外拠点がある場合、全体最適のためのグローバル・シングル・インスタンスの導入が、そうした拠点の業務効率を下げてしまうリスクがあります。そして、海外拠点の場所や事業の内容によっては、本社と同様の大規模なERPシステムを、多額の費用をかけて導入すること自体がリスクといえます。
グローバル経営において、本社ではSAP S/4HANAのような大規模製品をコアERPとして運用し、海外拠点やグループ企業では、拠点単位で異なるニーズに対応できる柔軟なERPを選択し、コアERPとの連携を図る2層ERPモデルが有効です。
例えば、海外拠点ではSAP Business ByDesignを利用し、本社で利用するSAP S/4HANAと連携させることで、グローバル・シングル・インスタンス採用時と同様に、グループ全体の経営データを早期に取得することができます。
このように、自社や海外拠点の事業内容や経営方針にあわせ、柔軟にERPを運用していくことがグローバル経営実現への早道といえるでしょう。
関連サービス
- コンサルティング/PoC 企業のグローバル化が進む中でIT組織プランから運用保守を含めたコスト最適化分析支援まで、SAP アプリケーション導入のためのコンサルティングを提供します。
関連資料
-
2層ERPで実現する事業サイズに見合った経営基盤構築
SAP Business ByDesignは、事業の目的やサイズを考慮したSaaS型のERPです。NTTデータ グローバルソリューションズは、SAP Business ByDesignに関する豊富な知見とグローバルでの導入実績を有しており、SaaS型のメリットを企業が最大限引き出せるよう支援を行います。 ダウンロード
-
DXを実現するSAP S/4HANA🄬新規導入
デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するための基盤としてSAP S/4HANA🄬が注目を集めている。しかし、SAPS/4HANA🄬の新規導入にはいくつかの押さえるべきポイントがある。NTTデータ グローバルソリューションズが、SAPS/4HANA🄬を活用した基幹システムの最適な導入に向けてどのように支援し、DX推進を実現するをご提案します。 ダウンロード
-
基幹システムソリューションガイド(大全)
NTTデータ グローバルソリューションズが提供するお客様のDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現するためのソリューションガイドです。ぜひ、ご一読ください。 ダウンロード