SAP移送とは?
SAPソリューションを採用している企業の多くは、SAPシステムを運用していく上での大きな課題の一つに「移送」業務を挙げます。
法改正や機能追加などに応じて、SAP/ERPシステムを開発する際、本番環境での不具合を最小限に留めながら、安全に上位レイヤーのシステム(開発機→検証機→本番機)へ新規プログラムやカスタマイズしたシステムなどを移し、システムをアップデートする方法をSAP ERPシステムの世界では「移送」と呼んでいます。
今回のコラムでは、この3つのランドスケープ、すなわち開発機から検証機へ、検証機から本番機へ、不具合などを確認しながら、アドオン開発や新たにカスタマイズしたものを移送する際の課題に焦点を当てていきます。
煩雑なSAP移送業務
企業によっては、SAP移送の際に月間数百本のプログラムを移送しなければならないことがあり、これらの移送業務に多くの労力が費やされています。移送対象のABAPプログラムや移送業務の工程に問題があることも多く、移送時にトラブルが発生することも少なくありません。SAP移送に伴う負荷はそれだけではありません。
企業によっては、SAPソリューション以外のプラットフォームや他ソフトウェアと連携してシステムを運用していることも多いため、他システムへの影響を視野に入れた移送作業が必要になります。企業のシステム担当者やシステムの運用保守を担当する企業は、これらの移送に伴う問題に対し、迅速に、かつ大局的に対処していくことが求められます。
SAP移送業務における諸問題・課題
移送内容に不備があるとスムーズに移送作業を実施することができません。円滑な移送作業を妨げる要因として、以下のトラブルやミスが挙げられます。
- リリースに伴う影響範囲を確認するのに時間がかかる、あるいは影響を見落としてしまう。
- オブジェクト不足によるプログラム障害。
- 移送の依頼内容に不備がある
- 誤ったインポートタイミングによる変更ミス。
- 承認手続きと移送作業が正しく連動されていないため、許可されていない本番環境に変更が反映されている。
- 変更、インシデントなどとの記録がリンクされていないため、変更理由などのトレースが困難。
- 移送の実行順番に齟齬が生じている。
- 移送担当者と開発者との間の認識の齟齬による適用ミス。
これらのトラブルを未然に防ぐためには、移送前に影響調査を精緻に実施し、システムの担当者間で予め情報を共有するなど、リスクヘッジをとることが非常に重要です。また、移送プロセスを自動化することである程度の人為的ミスを防ぐことが可能になります。
自動化により作業ミスと工数を大幅に削減
移送提案を登録し、移送ワークフローを設定することで、移送プロセスを自動化することが可能になります。当ワークフローは汎用的なワークフローであるため、あらゆるシステムランドスケープに適応させることが可能であり、複数の移送対象に対して複数の移送依頼を設定することができます。これにより、移送の管理に伴う負担を大幅に軽減できると共に、マニュアル設定による人為的な作業ミスの削減が可能になります。
SAPシステムは、導入時のみならず保守・運用のフェーズにおいても、さまざまな業務が継続して発生します。少人数体制や、他システムとの兼任体制で運用がされているケースでは、「効率化を図りたい」、「特に、移送(リリース)に関わる作業負担を減らしたい」といった、運用の作業負担の大幅な削減を求める声が多く出されます。
これらの要望に応えるべく、当社ではSAPシステム運用支援ツール、ノウハウを多数提供しています。
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