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コラム

~プロキャディ・ストーリー vol.02~優勝の喜びと昂りをもう一度経験したくて卒業を先送りにしました。のメイン画像

~プロキャディ・ストーリー vol.02~
優勝の喜びと昂りを
もう一度経験したくて
卒業を先送りにしました。

 

定由 早織
プロキャディ歴7年

 

偶然の積み重ねがプロキャディへのチャンスに

 

私は、ゴルフの競技経験がほとんどないままプロキャディとしてのキャリアを歩み始めました。ゴルフの面白さを知ったのは、高校卒業後にゴルフ場に就職したことがきっかけです。ハウスキャディの仕事を続けながら、プロキャディになりたいと思ったのは23歳の時でした。当時私が勤務していたゴルフ場は、女子のGプロのホームコースでした。Gプロのスポンサーの方が、私が懇意にしていた飲食店の常連さんで、偶然スポンサーの方と一緒に来ていたGプロにその場でお会いしました。その際、プロキャディになりたいという話をぶつけ、彼女から「やってみれば」と勧められました。そのような、いくつもの偶然が重なりました。後日、Gプロと一緒にラウンドした後で、「本当にやる気があるのであれば、キャディをお願いします」という言葉をいただき、プロキャディとしてデビューしました。
一般的にはゴルフ場の研修生を経て、同期のプロゴルファーに帯同する形でプロキャディになる人が多いと思います。私は人との縁を大切にすることが、チャンスに繋がりました。本来の私は人見知りで、プライベートでは内向的な人間ですが、ゴルフ場では誰とでも仲良くなれるキャラに切り替わります。プロデビューして間もなくメジャー大会を制した女子のSプロと組むことができたのも、トーナメントを転戦するなかで、Sプロを指導していたコーチと知り合ったからです。当時のSプロはプロテストに合格したばかりのルーキーで、2019年のシード権を獲得するために争っている最中でした。

 

辛い時期を越えてSプロと初めての優勝を経験

 

Sプロとの初対面時に、この選手はシード権を絶対に取ると直感的に思いました。なぜなら、打つ球が他の選手と比べてとても力強く、優勝を争えるだけの力を持っていると感じたからです。また会話を通じて、明るくてよく笑う面白い選手というのが第一印象です。その後、1年半にわたってSプロに帯同しましたが、私が帯同したトーナメントではなかなか優勝できませんでした。2019年の初優勝からメジャー大会の優勝をはさんで迎えた国内3勝目は、他のプロキャディと組んだ試合で、私はとても悔しい思いをしました。周囲の目が気になり、落ち込んだこともあります。だから、シーズン終了間際に帯同したトーナメントでSプロが優勝した時は、本当に嬉しかったです。私にとっては、プロキャディとして初めての経験で、優勝することでしか見えない景色があることを知りました。あのときの気持ちの昂ぶりは、とても言葉では表現できません。それまでの私は、帯同しているプロゴルファーがトーナメントで優勝したら、一つの区切りとしてプロキャディをやめてもいいと思っていました。しかし、実際に優勝の瞬間に立ち会ったら、この気持ちをもう一度味わいたいという強い気持ちが生まれ、こうして現在もプロキャディという仕事を続けています。
今ではできるだけ多くの優勝を実績として重ねることが私の目標になりました。もちろん、ただ闇雲に優勝を目指すということではなく、帯同するプロゴルファーの状況に合わせて、試合ごとの目標を設定するようにしています。ランキングを上げるためには、試合ごとの獲得ポイントが重要になるため、選手にプレッシャーをかけないように、自分の中だけで決めている目標です。

 

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敏感な嗅覚を活かしてメンタルをサポート

 

私のプロキャディとしての強みは、メンタル面のサポートだと思います。
感情の起伏が激しい若い選手へは、落ち込んだ時にどうやって立て直しができるかを常に考えています。私自身はプロゴルファーを目指して技術を磨いていたわけではなく、スイングのことなどについて聞かれても答えられません。それは、帯同するプロゴルファーにも伝えており、技術面については期待していないと思います。選手自身のプレーが上手くいかず、ラウンド中にすねたり、怒ったりする選手を平常心に引き戻すのは難しく、何が正解かわかりません。常に試行錯誤の連続です。ただ、できるだけ若いプロゴルファーと共通の接点を増やすために、トレンドにアンテナを張るように心がけています。それでも最近は「何だろう?」と聞かないとわからない話題が増えてきて、選手とのギャップを感じるようになりました。
以前、あるコーチから、私は試合の流れや空気を読む嗅覚に優れていると言われたことがあります。自覚はしていませんが、無意識のうちに感じ取っているのかもしれません。試合中の間の取り方は、非常に大切で、プロゴルファーに声をかけるタイミングには常に注意しています。

 

日本プロキャディー協会へは、30歳までプロキャディを続けた一つの区切りとして入会しました。入会後、今までのプロキャディ同士のネットワークとは全然異なるフィールドからの情報を入手できるようになりました。また必要な道具、たとえばサングラスや距離計測器の提供など、さまざまなメリットがあるのも助かりました。
今後は、トーナメント会場における更衣室の充実やトイレの増設など、働く環境面の改善についても協会へ期待をしています。
優勝を経験したらプロキャディ卒業、という私自身の当時の目標が変わりました。最近は、この仕事が天職という気持ちが強くなり、そう簡単には辞められないと思います。

 

編集後記

 

ただ闇雲に優勝を目指すのではなく、試合ごとにステップを刻んで少しずつ進むという定由プロキャディのアプローチは、とても理にかなっていると話しを聞きながら感じました。私たちITコンサルタントの現場においても、中には、ともかくすぐにゴールへ向かおうとされるお客様がいらっしゃいます。早く成果を出したい気持ちは同じなのですが、スピードを求めるあまり準備やプロセスがおろそかになり、目標達成が遠のいてしまっては本末転倒です。定由プロキャディは若い選手と組むことが多くあり、プロとしての実績を上げたいプロゴルファーのはやる気持ちを抑えるのは大変だと思います。私たちの仕事においても、定由プロキャディが試合の流れを読んで間を大切にするように、社内外の環境変化に合わせて、お客様に適切なマイルストーンの提示と設定をし、着実に推進できるように心がけています。

 

 

【定由早織 さだよしさおり プロフィール】

 

ゴルフ場のハウスキャディから競技未経験でプロキャディに転身した経歴を持つ。メンタル面のサポートや試合の空気や流れの的確な読みを強みに活躍している。

 

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