牧野 みゆき
プロキャディ歴16年
最近はツアートーナメントのたびに、帯同するプロキャディを変えるプロゴルファーが増えてきました。でも、私は同じプロゴルファーと一定期間コンビを組むよう心掛けています。プロキャディとして、しっかりサポートするためには、帯同するプロゴルファーのデータを細かくチェックして、プレースタイルや性格までを理解する必要があると考えているからです。長期にわたって帯同しているプロゴルファーなら、基本的なことは把握でき、どうやって気持ちを盛り立てていくかという雰囲気づくりまで気配りすることができます。
しかし、毎週のように組むプロゴルファーが変わると、お互いの理解を深める余裕がなく、準備万端で試合に臨むことができません。したがって、この数年はシーズンを通じて3人くらいのプロゴルファーをローテーションするよう私は調整しています。よって、新しい選手とはほとんど組んでいません。
本日の予選ラウンドに帯同した女子のHプロとも長いお付き合いで、もう5年目になりました。私自身もプロキャディとして、しばらく優勝から遠ざかっているので、Hプロと初優勝の喜びを分かち合うことが目標の一つになっています。今日の予選ラウンドではHプロが調子を上げて、5アンダーで終えることができました。トーナメントに挑むプロゴルファーは、ほんのちょっとしたきっかけで流れに乗ることがあります。Hプロは、誰もが知る韓国女子のレジェンドであるSプロと練習ラウンドを回ったことが、好成績に繋がりました。
私は2週間前に開催されたトーナメントで、初めてSプロに帯同しました。世界ランキングのトップに輝き、長期にわたって第一線で活躍し続けているレジェンドです。以前にSプロに帯同したプロキャディの方からアドバイスをいただきました。選手に関するデータをしっかり事前に用意しておけば、それをもとに本人がクラブを決めるということを知り、入念に準備しました。Sプロはショットも攻め方も完璧で、本当にレベルが高い選手です。プロキャディとして、多くのプロゴルファーを見てきたからこそわかる、圧倒的な強さです。
トーナメントの結果は2位でしたが、「また機会があったらぜひお願いします」とSプロから言葉をいただきました。私の一生懸命が伝わったと思うと、非常にうれしくて胸が熱くなりました。
Sプロは今回のトーナメントにも参戦しているので、練習ラウンドを一緒に回ると、いろんなことを教えてもらえるよ、とHプロに助言しました。そこで、Hプロがお願いすると、Sプロは快諾してくださいました。Sプロに学んだおかげで、今日はパターがとてもよく決まり、好スコアでまとめることができました。
ラウンド後に、Sプロに報告し、御礼を伝えたら「よかったね、まだ2日あるから頑張ろうね」と励ましの言葉をかけてもらいました。Sプロは技術に優れているのはもちろん、ファンサービスも素晴らしいです。加えて、後輩プロゴルファーへのアドバイスはもちろん、帯同するプロキャディも大事にしてくれます。
ゴルフだけではなく、人間性においても別格だと感じました。こうした素晴らしいプロゴルファーと出会う喜びもまた、プロキャディという仕事の醍醐味だと思います。
かつては、私自身もプロゴルファー候補生の一人でした。高校のゴルフ部に所属し、県大会で優勝したことから、卒業後はプロへの挑戦を続けていました。しかし、何度か挑むうちに、プロの世界で闘っていくのは難しいという現実を突きつけられて断念しました。
それでも好きなゴルフというスポーツ関わる仕事に就きたいという思いは強く、プロゴルファーになった知人からトーナメントのキャディを頼まれたことがきっかけになり、プロキャディの道を選びました。以前は私のように、プロゴルファー志望の研修生からプロキャディになるケースが多かったのですが、最近は少しずつ変わっています。競技経験のない人やゴルフ業界ではない異業種から入ってくる人もいて、門戸が広がるのはいいことだと思います。
しかし、女性のプロキャディはなかなか増えません。私はトーナメントで臨時の女性キャディと一緒に回る機会があると、すかさずプロキャディになってみないかと声をかけています。
先輩方の努力があり、日本プロキャディー協会が設立されました。協会の設立をきっかけに、選手と違ってクラブハウスで食事ができないこと、更衣室やロッカールームの整備が不十分であることなど、待遇面の意見が言いやすくなりました。欧米のようにプロゴルファーと同等の待遇になるように期待しています。また協会の清水 重憲副代表理事からは、女性キャディの育成やメンター役は牧野さんに頼みますと嬉しい言葉をいただきました。
現在は、女性のキャディが増えるよう、頑張ってスカウトを行っています。働く環境の一例として、確かに女性が重いキャディバッグを担ぐのは、体力的に厳しい面もありました。しかし、近年では電動カートの導入が進み、体力面でも負担が少なくなってきました。働く環境や待遇も合わせて、働き方改革が今後も進んでいくことを期待しています。
プロキャディは、すごくやりがいのある仕事です。頑張りが報酬にもつながることもありますし、トッププロからのオファーや海外トーナメントへの転戦など夢も広がります。もし、興味があったらチャンスを待っているだけではなく、ぜひ積極的に挑戦してほしいと思います。
高校時代には県大会優勝経験もあり、自身も一度はプロゴルファーを目指していた経歴を持つ。選手との長期的な信頼関係を大事にし、選手の癖や性格も考慮したきめ細かなサポートが強み。女性キャディのスカウトや育成にも精力的に活動している。
長期間にわたって同じプロゴルファーと組むことで、きめ細かなサポートが可能になるという牧野プロキャディ。
もちろん、私たちITコンサルタントも同様です。お客様の事業や業務理解も一朝一夕では深められません。また、長い期間を伴走してようやく見えてくるものの中に、課題解決のヒントが隠れていることも多々あります。長期間にわたる良好な関係の継続が、提供できる価値の最大化につながるのは、プロキャディと私たちの共通点だと感じました。また、牧野プロキャディは一流プロゴルファーとの出会いから大きな刺激を受けたと語っていました。
私たちもお客様から学び、気付きを得ることがたくさんあります。私たちはIT領域でのプロですが、担当する業種はさまざまで専門に特化しているわけではありません。
お客様に寄り添いながら、私たち自身も新たな知見を得て成長し、支援を行っているのです。
どんな状況においても 絶対にあきらめないことが勝利の可能性に繋がります。日本プロキャディー協会副代表理事 清水 重憲氏 こちら
優勝の喜びと昂りをもう一度経験したくて卒業を先送りにしました。日本プロキャディー協会 定由 早織氏 こちら
娘を見守る母親のように選手に寄り添いながら共に成長できる喜び。日本プロキャディー協会 原田 眞由美氏 こちら
あらゆるプロゴルファーに柔軟に対応するために自分のスタイルを持たない。日本プロキャディー協会 AKI氏 こちら