私はゴルフ歴が長く、プロゴルファーが参戦するトーナメントのTV中継を欠かさず観るファンの一人です。ですが、実際のトーナメント会場に足を運んで、試合を観戦したことは今までありませんでした。この度、当社が日本プロキャディー協会(以下 JPCA)とのスポンサーシップ契約締結を機に、実際のトーナメントでプロキャディの方々が活躍する姿を見てみたいと思い立ちました。そこで、ある女子トーナメントの予選ラウンドに、初めてギャラリーとして観戦しました。実際に体験したトーナメントの雰囲気と、試合を見る楽しさについてご紹介します。
なぜゴルフの観客をギャラリーと呼ぶのか?初めてギャラリーとしてトーナメントを観戦するにあたり、ふと疑問に思い調べました。ギャラリーといえば、美術館や画廊のことで絵画を鑑賞するように声を出さずに観ることが由来かと考えていました。しかし、そうではありませんでした。ギャラリーには、劇場でステージから最も遠い席である天井桟敷という意味があります。そこから転じて、遠くからプレーを見るゴルフの観客をギャラリーと呼ぶようになったようです。
しかし、実際にギャラリーとしてトーナメントを観戦すると、これほどプレイヤーを間近に見られるスポーツは他にないという印象を受けました。ティーイングエリアの最前列なら、プロゴルファーとプロキャディが談笑する声、ショットを打つ直前の張りつめた雰囲気など、TV中継では伝わらない臨場感が味わえます。ギャラリーはコースに張ったロープを超えない限り、自由に動けます。従って、コースによっては格闘技のリングサイドや、相撲の砂かぶりのような迫力を楽しむこともできます。
トーナメントが始まって、最初の組がスタートするのは午前7時半ごろです。通常、プロゴルファーとプロキャディはスタートの2時間前には会場に入り、ドライビングレンジでアイアンやウッドの練習後、パッティンググリーンでパターの感触を確かめるのがルーティンになっています。応援しているプロゴルファーがいる場合は、スタートの1時間半ほど前に会場に着けば、試合前に練習する風景も見ることができます。ドライビングレンジで一流のプロゴルファーたちが次々にショットを打つ姿は、実に壮観で一見の価値ありです。
観戦の中で意外だったことは、想像していたほど張りつめた緊張感は感じられず、なごやかな雰囲気でコースを回っているように見えたことです。後日JPCA所属のプロキャディの方に伺ったところ、プロゴルファーの対応によって多少の差はあるものの、同組の中で競り合っているような状況でない場合、決勝ラウンドでも雰囲気は変わらないということでした。試合中に、緊張やプレッシャーを感じるのは仕方がないことですが、パフォーマンスに影響がでないようにメリハリをつけることを心掛けているようです。私たちITコンサルタントがお客様をサポートする時にも、プロジェクトを進めるべく集中することは大切ですが、スケジュールばかりを重視して急ぐあまり、ミスが発生したり、視野狭窄になったりしないように気を付けています。もちろん緊張がいい結果を生むことも多々あります。しかし、私たちがお客様と進めるプロジェクトは長期にわり、かつ関わる人も非常に多いです。したがって、時に立ち止まり、振り返りながら、緩急をコントロールすることも重要です。
トーナメント当日は晴天で風もほとんどないという好条件だったせいか、私が観戦していた組のプロゴルファーは、クラブ選択時に迷う場面がほとんどなく、スムーズにショットに入りました。予選ラウンドの前に設けられた2日間の練習ラウンドで組み上げたコースマネジメントに基づき、素早い判断を下していたのかもしれません。練習ラウンドでプロゴルファーのコンディションを見極め、コースの環境に応じて複数の攻め方を考えておく、というJPCA所属のプロキャデイの方から伺った話を思い出しました。
準備が重要なことは我々ITコンサルタントも同様です。お客様の現状を把握するために入念な調査・分析を行い、解決すべき課題を明確にするまでに多くの時間を費やします。プロゴルファーとプロキャディが練習ラウンドでクラブの番手を変えてショットを試すように、私たちも課題を解決するための提案、そしてソリューションが適切かどうかは、お客様とのPoC(実証実験)を繰り返した後、導入フェーズに進みます。ギャラリーとしてトーナメントを観ることで、改めてプロキャディの方々と私たちITコンサルタントの類似点の多さを実感しました。
観戦した当日の予選ラウンドは16時くらいに終わりましたが、プロゴルファーとプロキャディは休憩を軽めに取った後、ショットやパッティングの練習に入ります。4時間以上練習するプロゴルファーもいると聞き、そのタフさとモチベーションの高さに驚かされました。その日のプレーでミスしたところや、気になったところを納得するまで修正し、翌日の成果に繋げていきます。プロキャディは試合中だけではなく、練習ラウンドや試合後の練習においてもプロゴルファーを支える存在として頼られています。ITコンサルタントとして常にお客様に寄り添うことを標榜する私たちも、そのようにあらねばと強く感じました。
一人のゴルフファンとして感動したのは、トーナメント会場で、国内外の一流プロゴルファーとの距離が非常に近いことです。いつもTVで見ているプロゴルファーとすれ違った時には、思わず振り返ってしまいました。通常のトーナメント会場ではあまりないそうですが、会場内に設けられた飲食スペースでプロキャディや家族・友人などと一緒に楽しそうに食事をするプロゴルファーの姿を見ることもできました。天候に恵まれたおかげで芝の緑も美しく、応援しているプロゴルファーの後をついてコースを巡るのはいい運動になります。加えて、子どもが遊べるキッズパークなどのスペースも併設され、飲食も充実しており、家族を連れて来てもアウトドア気分で一日中楽しめそうです。
重い腰を上げてギャラリーデビューを果たした私ですが、決められた席がなく、自由に動き回れるスポーツ観戦の面白さは、ゴルフならではのものです。まだギャラリーを経験したことのない方へ、自信を持ってお勧めします。