SAPをAWSで活用するには?
パブリッククラウドのメリット
SAP社は「インテリジェントエンタープライズ」というコンセプトを掲げ、最新のERPである「SAP S/4HANA」、そして、その基盤であるインメモリデータベース「SAP HANA」などをパブリッククラウドで利用できるサービスを提供しています。オンプレミスの場合、サーバー機器を購入し管理しなければならないのはもちろんのこと、設置するスペースも確保する必要があります。また、ハードウェアの調達にも時間がかかります。一方、クラウドサービスを利用すれば、こうしたインフラ構築は不要となり、保守運用もクラウドベンダーに任せられるというメリットがあります。利用企業のIT部門は、保守や運用ではなく、イノベーションを生み出すための戦略や戦術の策定により多くのリソースを費やすことができるようになります。
SAP on AWS
SAP社は大手のクラウドベンダーと提携し、現在世界10ヵ所でSAPシステムのクラウドサービスを提供していますが、そのうち7ヵ所がAWSで稼動しています。AWSとはAmazon Web Servicesの略で、Amazonが提供している100以上のクラウドコンピューティングサービスの総称です。SAP社は、AWSの他、マイクロソフトによるMicrosoft Azure、グーグルによるGoogle Cloudを3大パブリッククラウドと位置付けており、2019年11月には、Microsoft Azureを「SAP S/4HANA」の優先パブリッククラウドとする提携強化を発表しました。
AWSは、他のどのクラウドプロバイダーよりも早い 2011 年に、SAP社が認定するパブリッククラウドベンダーとなり、翌2012年には世界初のSAP HANA認定パブリッククラウドに選定されています。AWSは、顧客ニーズに全方位的に対応する「SAP "360度"戦略」を推進しており、既存ERPやSAP S/4HANAのクラウド化のみならず、その機能を拡張するSAP SaaSソリューションや、先進テクノロジーを活用したイノベーション創出のフレームワーク「SAP Leonardo」への対応も可能となっています。また、高度な分析機能でクラウド上での意思決定を可能にする「SAP Data Warehouse Cloud」や、ビジネスユーザー向けの分析サービス「SAP Analytics Cloud」など、AWS上で構築しているソリューションも利用可能です。
インメモリデータベースの「SAP HANA」と、それを基盤とする「SAP S/4HANA」をシームレスに動かすためには大容量のメモリが必要になりますが、AWSはSAP社と協力し、大規模メモリを搭載した「Amazon EC2 (Elastic Compute Cloud)」を開発しました。これにより、1インスタンスで最大で24TBまで拡張可能となっており、「SAP S4/HANA」におけるスケールアウト方式も含めると48TBまでの拡張に対応します。また、AWSが提供するストレージサービス、Amazon S3(Amazon Simple Storage Service)などと連携することで、テラバイト単位からペタバイト単位、さらにその上のエクサバイト単位まで、顧客ニーズに応じて対応できるようになっています。
この他、SAPソリューション関連のAWSサービスとして、AWSリソースの監視サービスであるAmazon CloudWatchや、証跡作成を行うAWS CloudTrailなどがあります。前者は、SAPワークロードのリソース利用状況を収集するとともに、AWSリソースの変更に自動的に対応するためのアラームを作成するのに活用でき、後者は、AWSアカウント内で行われたすべてのAPI呼び出しを記録することで、SAPソリューションリソースの証跡作成を自動化できるサービスです。
様々な活用方法
現在は、SAP社の開発拠点にAWSのメンバーが常駐し、技術レベルで交流を重ねており、「SAP on AWS」を利用している企業は、現在世界で5,000社以上、国内では数百社にのぼります。こうしたユーザーによるAWS利用方法は様々です。本番環境の SAP ホスティング、つまり、完全な SAP 環境を AWS クラウドでホストする形もあれば、災害対策として、オンプレミス SAPシステムのDR(Disaster Recovery)サイトとしてAWS クラウドを活用するユーザーもいます。日本のユーザーの場合、シンガポールのサーバーを活用したDRサイトを低コストで構築することも可能となっています。また、契約や初期費用なしで、短時間でインフラとシステムを用意できるため、オンプレミスにするかクラウドにするか検討する際のテストに利用することも可能ですし、SAP システムのビジネスドキュメントとデータを Amazon S3 に保存することで、オンプレミスでストレージを構築する費用を抑えることもできます。
2013年にSAP Business SuiteからAWSへの移行を実施したある電子機器メーカーは、導入を決定してから6カ月で本番環境の稼働を実現しました。また、物理サーバーを導入する場合と比較して、5年間で60%以上のコスト削減になる見通しとしています。また、2018年にオンプレミスのSAP ERPをAESに移行したガラスメーカーは、移行によって主要なSAPシステムのコストを42.8%削減できたと発表しています。
ユーザー向けサポート
ユーザーはAWS で既存の SAP ライセンスを使用し、ホストオペレーティングシステム、仮想化レイヤーから物理インフラストラクチャ、施設に至るまでのコンポーネントを操作、管理、制御します。
ゲストオペレーティングシステムと、その上で実行するアプリケーションおよびデータベースはユーザーが管理しますが、AWSでの SAP 環境の実装や管理ができない場合や、ユーザーが独自に行うことを希望しない場合のために、AWSにはSAPソリューションと AWSに合わせて調整したサービスを提供している SAPコンピテンシーパートナーのネットワークがあります。SAP コンピテンシーは、AWSでのSAP アプリケーションの実装、移行、管理においてユーザーを適切に支援してきた実績を持つ企業が取得するもので、日本でも40社以上がSAPコンピテンシーパートナーとなっています。
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