IoTを製造業に取り入れるには?メリットとその活用例をご紹介
IoT技術の活用による生産工程の効率化が必須となっている日本の製造業ですが、IoT活用にも課題が残っています。今回のコラムでは、製造業でIoTを活用するメリットやその課題。また、一歩進んだIoT活用を実現するためのSAPソリューションを紹介します。
IoTとは
IoTとは“Internet of Things”の略で、さまざまなモノに通信機能を搭載し、インターネットに接続・連携させる技術を指します。IoTが登場する前は、インターネットにつながるのは主にコンピュータでした。現在では、家電や自動車、センサーなどもインターネットに接続するようになりました。IoTにより、これまでインターネットに接続されていなかった様々な「モノ」が、ネットワークを通じてサーバーやクラウドサービスに接続されるようになったのです。
製造業におけるIoT活用のメリット
IoT技術はさまざまな業種で活用されていますが、製造業においても、生産性や品質の向上、コスト削減や人材育成などの面でメリットがあると期待されています。例えば、工場内のあらゆる機器や設備の稼働状況やそこで働く従業員の状況をリアルタイムに収集、分析することができます。結果、これまで見えてこなかった無駄や改善点を可視化し、生産体制の向上につなげることができます。また、不具合や異常を早期に検知し、重大な故障により生産ラインが止まるような事態を未然に防ぐことが可能です。
そして、グローバル化に伴う競争の激化に加え、少子高齢化による人手不足というような課題を抱える日本の製造業にとっては、IoT技術の活用による生産工程の効率化は不可欠といえます。
日本においては、様々な技能やノウハウが属人化し、熟練工が引退すると技能が継承されないという課題に対しても、IoTやAIの活用が有効だと期待されています。
「見える化」は手段であり目的ではない
日本の製造業には、正確なデータが蓄積されているといっても、それがただ存在しているだけでは新たな価値を生みません。
データを蓄積するだけではなく、それらを分析し、付加価値の高い情報として活用することが必要です。例えば、国内大手エレクトロニクスメーカーでは、製造機械の稼働データを蓄積、分析することで、機械トラブルの原因を可視化することに成功しました。以前は、熟練工でも原因追及に6時間かかることもあったが、見える化により、誰でも1時間で解決できるようになったといいます。
また、建材メーカーでは、工場内の温度や湿度といった数値を元に、快適性と消費電力量をリアルタイムで表示する仕組みを導入し、夏季の生産重量当たりの空調エネルギー消費を約2割削減することに成功しました。
人材の高齢化や人手不足が課題となっている日本の製造業においては、熟練技術を有する職人や、品質や技術力を裏打ちする良質なデータが現場に残っている間に、将来の姿を見据えた対策を行うことが急務といえます。
経産省が発表した「2019年版ものづくり白書」によれば、個々の機械や製造工程全般の稼働状態について見える化を行い、改善等に取り組む企業の数は年々増加傾向にあります。製造工程を見える化し、生産工程の改善に活かす動きは拡大しているといえるでしょう。