EPMとは?
EPM(Enterprise Performance Management)は、経営情報を可視化し、分析機能を提供することで、問題発見および解決を支援する管理手法を指します。
企業の業績を常に監視して、迅速に対処するためのもので、日本語では、「企業パフォーマンス管理」と呼ばれます。EPMソリューションとしては、SAP社の「Business Planning and Consolidation」などが主要な製品です。また、ベンダーによっては、CPM(Corporate Performance Management)や「企業業績管理」などと呼ぶこともあります。
今回は、こうしたソリューションで具体的に何ができるのか、またなぜこうしたソリューションが必要なのかをご紹介します。
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整合性のとれた経営情報の管理・運用
企業組織には、無数の業務プロセスがあり、それらの多くは部門ごとに管理・評価されています。異なるやり方で管理・評価されると、業務プロセスがどんぶり勘定になってしまうこともあり、事業目標を効率良く達成することができません。
「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」というパーキンソンの法則があります。無駄な作業を減らし、効率的な経営を行うためには、どれだけの資源がどのように使われているかを把握し、適切に管理することが不可欠です。
EPMでは、企業の各部門における業務プロセスを、1つのプロジェクトとしてとらえて、その目標達成に欠かせないKPI(Key Performance Indicator)を設定します。組織全体で業務プロセス評価を標準化し、いつ・どこで・何が起こっているかを常に把握することで、問題点の迅速な発見と、目標達成に向かうための修正を実行できます。
KPIを導入し、業務プロセス評価が標準化されるということは、企業全体の業務プロセスが、同じフォーマットで管理されるということです。
企業の意思決定に必要な部分だけが標準化できれば、EPMの目的は果たせるのです。そうすることで、全社で蓄積されていく情報やノウハウを、社内の別部署で活用することが可能になります。業績改善や効率化のためのノウハウを、部署や部門単位ではなく、会社全体の資産とすることで、企業活動の全体最適化に向けた取り組みを進めていくことができます。
また、こうした取り組みが進んでいくことで、社員が内部状況をより良く理解し、また経営施策への理解度が高まることも期待できます。透明性が高まることで、コンプライアンス面での効果もあるでしょう。
EPMを活用し、変化するビジネス環境に適応する
EPMを導入することで、こうした情報を活用し、精度の高い予実管理や将来予測を行い、企業の経営戦略を立案し、複数のシナリオを検討して、不確実な将来に備えたりすることができます。IT・通信技術の進歩やグローバルな競争など、ビジネスを取り巻く環境は目まぐるしく変化しており、現在の企業経営には、この変化についてゆくスピードが求められます。
しかし、財務経理部門、予算管理・管理会計の現場では、いまだにMicrosoft Excelを利用し、手作業で業務を行っている所が多いというのが実態です。Microsoft Excelを利用した予算管理では、データの収集や集計に多大な労力を要するだけでなく、手作業という性格上、作業が属人化したり、入力ミスが発生したりする可能性もあります。加えて、別の切り口から分析したい、というような経営陣のリクエストに柔軟に答えることも難しいでしょう。
EPMは、より高度な分析能力を通じて、経営判断をサポートするために必要なツールといえます。
また、2000年3月に連結財務諸表による開示が義務化されて以降、財務会計の領域だけではなく、管理会計の領域でも連結ベースでの管理を志向している企業が増えています。世界各地に子会社を持つようなグローバル企業がEPMを利用して各国の会計データを連結し、意思決定を迅速化・高度化することに活用しているという事例もあります。もちろん、冒頭で紹介したSAP社の「Business Planning and Consolidation」も連結決算に対応しています。
EPMを効果的に活用した事例として、米サウスウエスト航空社が知られています。2001年9月の同時多発テロにより、市場は激変し、航空会社の多くが売り上げを落としました。しかし、サウスウエスト航空はEPMを使い、マーケットの変化に機敏に対応したため、テロ以前よりも売上を伸ばすことに成功しました。整合性の取れた経営情報を効率的に管理し、真に経営に役立つ情報を適切なタイミングで入手し、さまざまな分析ツールを通じて精度の高い将来予測や着地予想を行う、というEPMの効果が発揮された事例といえるでしょう。
EPMからコラボレーティブプランニングへ
ビジネスに求められるスピードが更に加速する現在、部門や部署でのサイロ化を解消し、迅速な意思決定により全体最適を図ることの重要性は増しています。
SAP社では、「Collaborative Enterprise Planning」というコンセプトの元、「SAP Analytics Cloud」や「SAP Integrated Business Planning」といった、クラウドを活用した計画立案プロセスの連係や、実装や統合、モニタリングをより簡単に、柔軟に行えるソリューションを提供しています。
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