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RISE with SAP, Private Cloud Edition導入時のSAP BASISの作業について

2024年3月21日

本記事(ブログ)では、SAP社が提供するクラウドサービスであるRISE with SAP, Private Cloud Editionの導入時における、SAP BASIS(以下 BASIS)担当者の役割や作業内容をご紹介します。オンプレミスからクラウドプラットフォームが主流になりつつある中で、BASISの作業の違いについても分かりやすく解説しています。 ぜひご一読ください。

1. はじめに

昨今、SAPプラットフォームはオンプレミスからクラウドプラットフォームが主流になりつつあります。その中でSAP S/4HANAに関して、SAP社はRISE with SAP, Private Cloud Edition(以下 RISE with SAP,PCE)というクラウドサービスを提供しています。

RISE with SAP,PCEはSAP社自身が一部のBASISタスクを実施するプライベート・マネージド・クラウドであり、お客様のBASIS作業負担軽減を目的としています。このサービスによりお客様は、インフラ機器の調達、OS、SAPプロダクトの初期導入/設定というプロジェクト初期の時間を要する作業から解放されます。

しかし初めてSAPソリューションを導入するお客様にとっては、SAPシステムのアーキテクチャ、運用作業のポイントをあらかじめ理解しておかなければ戸惑うこともあります。そのため、BASISの役割を担う担当者が不要になる訳ではありません。

本ブログでは、RISE with SAP,PCEを利用する場合における、BASIS担当者が実施する作業についてご説明します。

2. RISE with SAP, Private Cloud Edition の概要

RISE with SAP,PCEの主な特徴は次の点です。

  • SAP社によるプライベート・マネージド・クラウドでOS、SAP S/4HANAのプラットフォーム、ユーザライセンスがバンドルされたサブスクリプション契約です。
  • 一般的なインフラ/BASIS作業はSAP社の担当です。ただし、システム変更作業の場合、SAP社はシステム変更によるアプリケーションへの影響確認/スケジュール調整等の作業は行いません。これらの作業はユーザ側の担当です。ユーザ自身がアプリケーションへの影響確認、業務調整をした上で、SAP社に作業を依頼します。SAP S/4HANAのアップグレード作業も同様のスキームです。SAP社はOS、SAP S/4HANAのバージョンアップ作業を実施するが、バージョンアップに伴うシステム変更による稼働確認、カスタマイズ設定調整、アドオンプログラムの変更はユーザ側の作業です。
  • 契約後、SAP社からは開発/検証/本番のすべての環境を同時に提供されます。新規導入プロジェクトの場合、プロジェクト開始からサービスインまで長期間を要することとなり、本番環境を利用することなくコストを費やすことになります。そのため、プロジェクト計画を立てる上で注意が必要です。
  • RISE with SAP,PCEに関する概要は、NTTデータ グローバルソリューションズの以下のWebページにも掲載しています。ぜひ、ご参照ください。

  • RISE with SAP こちら
  • RISE with SAPとは?(GSLコラム) こちら
  • 3. BASIS担当者の作業について

    フェーズ
    タスク
    説明
    プロジェクト開始、準備 サービス内容の理解と非機能要件定義

    オンプレミスの場合は、ユーザサイドですべてを実施する必要があります。ですが、RISE with SAP,PCEの場合、SAP社が大部分のBASISタスクを実行します。そのため事前にそのサービスの範囲、内容を理解する必要があります。

    それらはSAP社が提供しているService Description Guide,Role and Responsibilityに記載されています。クラウドサービスでカバーされない範囲は、オンプレミスの場合と同様に非機能要件定義(インフラ要件定義)を行い、インフラ運用管理機能の開発検討、ライセンスツールの導入等の検討が必要です。

    例として以下のようなものがあります。

  • シングルサインオン
  • ユーザサイドではSAP S/4HANAだけでなく、既存の複数のシステムを同じユーザIDで管理するためにシングルサインオンを適用する場合が多いと思います。

    しかし、RISE with SAPでは、シングルサインオンサービスは提供されません。したがって、ユーザサイドで検討し、実装する必要があります。

  • システム監視
  • クラウドサービスで提供してくれるシステム監視の内容は、システムにログオンできない場合(システムダウン相当の障害)にメールでその旨送信するというサービスのみです。

    システムリソース使用量の閾値を決め、閾値を超えた場合の通知、エラーメッセージ検知/通知等は、ユーザサイドで実装を検討する必要があります。

    このように、まずはRISE with SAP,PCEのサービス範囲を詳しく理解し、自分たちで対応すべき事項の準備をすることが必要です。

    サイジング、契約

    SAP S/4HANAの契約時にはサーバーサイズ、ユーザ数の2つを決める必要があります。

    サイジングはオンプレミス同様Quick Sizerを用いて算出するSAPS値がベースです。オンプレミスの場合は導入するハードウェアベンダがサポートしますが、RISE with SAP,PCEの場合は、ご自身でQuick Sizerを使用し、サイジングすることが必要です。

    サイジング結果に基づきXS、S、M、L等のあらかじめカテゴライズされたサーバーサイズを選択し、必要に応じてオプションでメモリ、DISK等を追加、サーバ構成を決定します。

    ユーザライセンス数は重み付けされた4種類のユーザタイプと各ユーザタイプのユーザ数から算出されたFUE(Full Usage Equivalents)で決定します。これらサイジング、ユーザライセンス数の算出は、BASIS担当者が中心となって関係者にヒアリングしながら推進するのが一般的です。

    プロジェクト期間を含めた運用期間 SAP社が実施する
    作業

    代表的な作業と特徴は次の通りです。

    • システムの停止/起動
    • 月に1回の定期メンテナンス時とユーザからの依頼時にSAP社が実施します。事前にシステム停止可能であることをBASIS担当者が中心に調整しSAP社に実施時間を提示する必要があります。

    • SAP S/4HANAクライアントコピー/削除
    • 具体的な要件、実施時間をあらかじめBASIS担当者が中心に検討、調整しSAP社に依頼します。ただし、SAP社が実行する作業はクライアントコピー/削除のみです。後処理に相当する作業はユーザサイドで実施する必要があります。

    • システムパラメータ変更
    • 変更内容はBASIS担当者が中心に決定し、SAP社に依頼し、実施します。システム再起動を伴うことがあるため、事前に実施時間を調整し、依頼が必要です。

    SAP社/自社
    いずれでも可能な
    作業

    代表的な作業は、以下になります。

    • 移送運用
    • SAP Note適用作業

    これらの作業は、SAP社が実施しますが、作業依頼の手続き、作業後の確認をユーザサイドで実施することが必要です。

    そのため、自社のBASIS担当が実施するほうが、効率的にプロジェクトを推進できると考えられます。

    自社で実施する作業

    代表的な作業は、次のものがあります。

    • SAP S/4HANAユーザ登録/管理

    • ジョブ登録/実行管理

    • 帳票印刷管理

    これらは、業務との関連があるため自社で実施する必要があります。

    オンプレミスと同様、BASIS担当者が中心となり、運用ルールを策定し作業する必要があります。

    サービスイン後の運用/システム維持 バージョンアップ

    SAP S/4HANAを継続利用するためには、製品のサポートが切れる前に新バージョンへのアップグレードが必要です。

    RISE with SAP,PCEでは年1回システムバージョンアップを実施するサービスに含まれています。ただし、SAP社が実施するのは、システムバージョンアップ作業のみです。

    アプリケーションの影響調査、稼働確認、修正等の作業はユーザサイドで計画、実行が必要です。バージョンアップ作業全体の計画、推進をするためには、オンプレミス時と同様にBASIS担当者が欠かせません。

    このように、オペレーショナルなことを、クラウドサービスとしてSAP社が実施することで、オンプレミス時と比べて作業負荷は軽減します。しかし、BASIS担当者が不要になるわけではないことをご理解いただけるかと思います。

    4. おわりに

    SAP社はこのように、SAP S/4HANAのクラウド利用促進と合わせて、SAP Business Technology Platform(SAP BTP)というクラウド上の開発プラットフォームの提供を推進しています。

    SAP S/4HANA内のABAPベースでのアドオン開発を、SAP BTPでSide By Sideの開発に置き換えることで、SAP S/4HANAをクリーンコアにし、労力を要するバージョンアップ作業の負荷軽減を図ることが狙いのひとつです。

    これまでのSAP S/4HANAだけでなく、EAI、DBプラットフォーム、ワークフロー等の開発プラットフォームをトータルソリューションとしてシステムを構築する際のシステムグランドデザイン、機能配置の検討もBASIS担当者は中心となって携わっていくこととなります。

    今後SAPプロジェクトを計画される際、BASISの作業は以前に比べて少し減りますが、担う役割の責任は大きくなることをご理解いただければと思います。

    今後も本ブログでは、引き続き皆様にお役立ちする情報を提供していきます。

    NTTデータ グローバルソリューションズでは、SAPシステムの導入支援や運用のサービスを提供しています。SAPシステムの導入や運用保守でお困りごとがありましたら、お問い合わせください。

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