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日本プロキャディー協会設立秘話 PART2 始動編

ゴルフと野球の二つの世界が偶然交差したことから、後に代表理事となる森本 真祐氏が温めていた日本プロキャディー協会設立の構想が実現に向けて動き始めました。森本氏らの依頼を受けた現理事の大井 勲氏の動きを追ってみましょう。

 

全国を縦断してプロキャディへのヒアリングを実行

 

そこから設立に向けた大井氏の精力的な活動が始まりました。ずっと野球と関わってきた大井氏は、ゴルフについての深い知識は持っていません。
まず、森本氏と清水氏が声をかけて協会設立に賛同していた約30人のプロキャディに直接会って、現状の課題と団体に何を期待するかについてヒアリングを行なうことにしました。しかし、トーナメントのシーズン中のため、プロキャディは全国各地に同行しています。大井氏は沖縄から北海道までトーナメントの開催地に行なって試合が終わった後、プロキャディが滞在する宿舎を訪ねて、丁寧に話を聞きました。大井氏は当時を振り返って、全国を縦断してヒアリングを行なうのに一番苦労したと言います。
「スケジュール的に大変な思いをしましたが、ほとんど知識のなかった私がプロキャディという仕事を理解して、さまざまな課題を把握することができました。待遇改善や地位向上は多くのプロキャディの方々が望んでいたことなので、協会の設立を急がなければという気持ちが強まりました」

 

大井 勲氏

 

異業種の視点から検証する業界の課題

 

プロキャディの現状について話を聞くなかで、驚いたことが多々あったと大井氏は語ります。
「率直にこんな待遇でいいのかと思いました。かつては旧態依然としていた日本のプロ野球界も改革が進み、現在はコンプライアンスを重視しています。もちろんコーチやスタッフは球団に所属しているので、その権利は契約によって守られています。プロキャディに関する限り、日本のプロゴルフ界は遅れていると感じました。プロキャディが一般的なスポーツにおけるコーチやトレーナーとは違う独特のポジションにあることも、その一因かもしれません。たとえば、専属キャディとしてゴルファーに帯同するプロキャディは限られていて、ほとんどのプロキャディがトーナメント単位でゴルファーからオファーを受けて年間のスケジュールを組みます。でも、それは正式な契約を交わすわけではなくて、口頭での依頼に過ぎません。もしも試合の前日や試合中にキャンセルされることがあっても、それについて何ら保証もされない。組織に所属しないフリーランスという立場だとしても、それでは職業として成立しません」
長らく荒川道場で野球畑を歩んできた大井氏から見ると、プロキャディの置かれている状況は問題が山積していました。条件や待遇により不自由を強いられることもあり、アメリカのプロキャディがプロゴルファーと同等の扱いを受けているのとは大きな違いがあったのです。
「アメリカではトーナメントごとに全てが契約書で決められているので、プロキャディもプロゴルファーも双方が納得したうえで契約を締結して試合に臨みます。プロキャディがストライキで抗議の意を示すなんて、日本では考えられませんが、アメリカではストライキが原因で中止になったトーナメントもありますし、過去2回ほど裁判にもなっています。プロキャディの権利や待遇が保証されている点では、アメリカと日本は雲泥の差があると感じました」
業界の中にいると、長く間にわたって続いてきた慣習を変えるのは難しく、時に問題の重要さに気付かないことさえあります。しかし、野球界という異業種から参入した大井氏の視点で見たプロキャディ業界は、大きな変革を必要としていたのです。

そして2019年11月。大井氏が依頼を受けてからわずか1年後に、一般社団法人日本プロキャディー協会が誕生しました。

 

次回、展望編に続く。

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