経営管理とは?経営管理のポイントとその整理を分かりやすくご紹介
変化のスピードが速い現代において、経営管理には的確な現状分析と将来予測がますます求められます。
その適切な経営判断を支え、実現するのがERPをはじめとする経営管理システムです。
今回のコラムでは経営管理の目的から、経営管理の手法、そしてなぜ経営管理をシステムで管理する必要性があるのかについて詳しく解説します。
INDEX
経営管理とは
経営管理の概要
自社のビジョンや目標を達成するために、さまざまな事業活動を企業は行っています。効率的に事業の目的を達成できるよう、「ヒト・モノ・カネ・情報」といった経営資源の配分の調整や総括を行う活動を、経営管理と呼びます。
経営管理は、企業活動の領域に応じて「生産管理」、「販売管理」、「人事・労務管理」、「財務管理」などに細分化される場合もあります。
経営管理の実務は、事前に策定された経営戦略や事業計画に基づき、経営資源の運用を行い、同時に計画通りに事業が進捗しているかどうかを確認することになります。
経営管理の目的
経営管理の目的は、経営戦略や事業計画を達成することです。
企業がもつ経営資源は有限で、効率的に活用することが求められます。3~5カ年の中長期計画から、年次、月次といった細かい計画に落とし込み、計画的かつ効率的に、経営資源を管理しなければなりません。また、計画に基づいてKPIを設定し、進捗状況を定期的に確認する必要もあります。
もし計画通りに事業が進んでいないのであれば、原因を把握し、対策を講じます。経営戦略や事業計画を達成するためには、経営管理のPDCAサイクルを回し、問題があればそれを早期に特定し、軌道修正を図ることが必要です。
経営管理に求められるスキル
経営管理として成果を出すために求められるスキルは、分析力です。
経営管理においては、収集したデータを元に適切なアクションを設定する必要があります。そのため、データや定性的な情報を元に、次のアクションを示唆するための分析力が求められます。
一方で、理想を掲げるだけでは成果をあげることができません。
企業の実業務を担当するメンバーを管理する必要があります。そのため、実業務を行うメンバーに明確なビジョンを提示し、行動を促すための高いコミュニケーション能力やリーダーシップも求められます。
経営管理の仕事のやりがい
企業内部の組織を横断し、さまざまな部署の人とコミュニケーションを取るため、自社に対する知見を深めたり、幅広い人脈を築けたりすることが経営管理の面白さです。
そのため、知的好奇心の強い方や、人との関係性を築くのが得意な方に向いている仕事といえるでしょう。
また、自社の経営方針に関わるスケールの大きさも経営管理の特徴です。誰にでもできる簡単な仕事ではありませんが、その難易度の高さや達成感にやりがいを感じる人も多くなっています。
経営管理の種類
経営管理は領域によって、生産管理・販売管理・人事管理・労務管理・財務管理に分かれます。ここからは、各領域でどのような管理を行うか、細分化して解説します。
生産管理とは
生産管理の業務範囲は、生産計画の策定から顧客への出荷までの一連の生産活動に及びます。
品質・コスト・納期の最適化、在庫の適正化によるキャッシュフローの改善、需給変動への対応などを行う必要があります。
原材料の購買計画、生産計画、作業員の配置などを管理しなければなりません。
販売管理とは
販売管理では、顧客・自社・仕入れ先の間で行われる、「モノ」と「カネ」の動きの管理を行います。
顧客からの受注の状況、商品の出荷進捗、請求状況などが管理対象になります。売り上げなどの数値情報を正しく管理したり、顧客と良好な関係を築いたりする上で重要です。
人事管理とは
人事管理とは、雇用から退職までの一連のキャリアにおいて、従業員の力を組織の中で最大限発揮するために行う管理です。
具体的には、透明性の高い評価制度の整備や、従業員のモチベーションを保つための施策、組織内における従業員の適切な配置計画作成などが挙げられます。少子高齢化により労働人口の減少が予測されている日本では、特に注目を集める領域です。
労務管理とは
労務管理では、給与の支払い、福利厚生の整備、勤怠状況の管理などが行われます。
労務管理の目的は、従業員に働きやすい環境を提供することと、コンプライアンスを徹底させ、法令違反のリスクを下げることです。
財務管理とは
財務管理は、企業が事業を行う上で必要な資金を管理することです。資金調達や資産運用の状況について管理を行います。
企業運営に必要な資金が足りなくなることを防ぐ働きがあるため、非常に重要な役割です。
経営企画との違い
経営管理は、経営企画とよく混同されることがありますが、それぞれ目的が異なります。
経営企画とは、経営ビジョンや目標に基づいて市場調査をし、達成するための計画を策定する業務です。また、そのような業務を行う部署を指す場合もあります。この中で、自社リソース、競合の企業などの外部環境に基づいて目標達成の手段として策定されるのが「経営戦略」です。したがって、経営企画が対象とするのは将来のビジネスであり、中長期的計画の立案などが業務のメインです。
一方で経営管理は、経営企画によって策定された計画や経営戦略に沿って、経営資源の振り分けやモニタリングを通じた進捗管理を行います。
PDCAサイクルに当てはめて、P「計画」・D「実行」に相当するのが経営企画で、C「評価」・A「改善」に当たるのが経営管理と考えると分かりやすいでしょう。
どのように経営管理を行うのか
経営管理をどのように行っているかは、企業によってさまざまです。年々少なくなってきたとはいえ、手作業やExcelで経営管理を行っている企業も存在します。
ですが、多くの企業では自社で開発した独自のシステム、もしくは市販のERPパッケージを利用して経営管理を行っています。企業の規模が大きくなるほど、独自の経営管理システムを利用している割合が高まります。
また、予算管理など、経営管理の特定の領域に特化したシステムを利用する場合もあり、EPM(Enterprise Performance Management)やビジネスインテリジェンス(以下、BI)ツールなどを使っている企業もあります。
ここからは、経営管理で用いられることの多い各システムについて解説します。
ERPパッケージを利用した経営管理
ERPとは、Enterprise Resource Planningの略称で、直訳すると企業資源計画です。
ヒト・モノ・カネに情報を加えた、企業の保有する資源を一元的に管理できるシステムで、経営管理に有効活用することができます。
例えば、SAP社が提供するSAP S/4HANAは、従来に比べ処理速度が飛躍的に向上したERPです。SAP S/4HANA上で得意先や仕入先などのビジネスパートナーや、在庫の入出庫の情報など、企業運営に関するさまざまな情報を一元的に管理することができます。
EPMを利用した経営管理
EPMは、経営情報を常に可視化し、分析や課題への対処を迅速に行う際に用いられます。
例えば、SAP社が提供するEPMソリューション「SAP Business Planning and Consolidation」では、業績管理における「予算」、「計画」、「フォーキャスト(着地予想)」の編成・策定作業を一元管理できます。
BIを利用した経営管理
BIツールとは、収集したデータを加工・分析して、経営上の意思決定を支援するものです。
レポートやダッシュボード、グラフなど、分かりやすい形でデータを表示できます。BIを利用することで、効率的に経営管理を行うことが可能です。
スイスのBoard社が提供するBIソフトウェアソリューション「Board」は、過去の実績データを可視化し、そこから課題と傾向を抽出することができ、将来の営業計画や財務計画を立案し、高精度のフォーキャストを作成することが可能です。
参考記事
- ERPとは?基幹システムとの違いや導入形態・メリットと導入の流れを解説 ERPパッケージとは、企業の基幹業務の統合化を図るERPを実現するソフトウェアです。ERPを導入することで、業務の効率化やコスト削減といったメリットを得られます。もちろんデメリットもあります。本コラムでは、ERPパッケージについてまとめ、導入を実現するためのポイントを分かりやすく解説します。
- SAPとは SAPは、「経営・業務の効率化」や「経営の意思決定の迅速化」を実現することを目的に、多くの企業で導入されているITソリューションです。このITソリューションにより、企業の経営資源である「人・モノ・カネ」の情報を一元で管理ができ、そして経営の可視化を実現できます。本コラムでは、SAPについて詳しく解説をしていきます。
経営をシステムで管理するメリット
前セクションでは、経営管理をシステムで管理する具体的な方法について説明しました。ここからは、経営管理をシステムで管理することで、どのようなメリットがあるかについて解説します。
経営のスピードアップ
経営管理システムが全社的に導入されていれば、同じフォーマットで管理された情報を収集することが可能です。それに基づき将来予測を行うことができれば、意思決定を迅速に行えます。
データを収集するのに時間を浪費し、そのデータが実際の計画に反映される頃には状況が変化している、といったような事態を避けられるのも、経営管理システムを活用するメリットの1つです。
事業の状況の可視化
経営管理システムを使用することで、常に企業のビジネス状況を可視化できるようになります。
システムを用いずに、マニュアルで売り上げや在庫情報を管理している場合、経営状況を把握するには集計のタイミングまで待つしかありません。
しかし、経営管理システムを用いれば、「いつ」、「どこで」、「何が起きているか」をリアルタイムに把握できます。また、事業目標を達成するのに欠かせないKPI(重要経営指標)を設定すれば、何か問題が発生した時にはそれを迅速に発見し、修正を行うことが可能です。
このように、システムで管理することによって、いつでも経営状況を数値情報として把握できるのが、メリットの1つといえます。
業務効率の向上
経営管理にシステムを導入することで、企業の業務生産性が向上することもメリットの1つです。
例えば、Excelをはじめとするスプレッドシート等にマニュアルで情報をまとめるという手法を取る場合は、時間がかかります。加えて、ミスが起こる可能性もあります。また、Excel等での運用は、業務が属人化し、社内の特定の人物の稼働状況に依存するおそれもあります。
システムを使って自動で情報収集・整理ができるようになれば、マニュアル作業を払拭し、業務効率化が見込めます。
経営管理システムの課題
経営管理システムには意思決定のスピードアップ、事業の可視化などのメリットがあることが分かりました。
ここからは、経営管理システムを使用する際に発生しがちな課題について解説します。自社開発したレガシーシステムと経営管理システム新規導入時の2つのケースに分けて考えます。
レガシーの経営管理システムが抱える課題
自社開発の経営管理システムが老朽化し、現在のニーズにあわせた経営管理システムに刷新しようとする際の障害となることが多くなっています。カスタマイズを繰り返し、ブラックボックス化してしまった経営管理システムでは、日々変化するビジネス環境の変化についていくことは困難です。
また、レガシーシステムでは、拠点を横断した情報収集が難しいことも問題になりがちです。現在多くの日本企業が海外に進出する一方で、単体中心の予実管理を続けており、グループ経営の課題に十分に対応できていないというケースもあります。
経営管理システムを、本社のみ、あるいは、経営企画や経理部門のみ、というように限定した範囲で利用する企業もありますが、経営の全体最適化を実現するためには、単体から連結中心の経営管理へ軸足を移し、企業全体で経営管理システムを活用することが望ましいでしょう。
経営管理システム新規導入時に起こりがちな課題
新しい経営管理システムを実際に利用すると、以下のような課題に直面する場合があります。
管理指標が不明確
不明確な管理指標の設定は、社員のモチベーションを削ぐ上、適切な経営改善につながりません。
そのため、指標として設定する項目についてはしっかりと検討し、シンプルで誰もが明確に理解できるようにすることが大切です。また、達成することが到底不可能な高すぎる目標ではなく、社員が到達できるレベルの適切な目標値を設定する必要があります。
売上増大への貢献が不透明
経営管理システムが売上増加に役立っているか、疑問視されることもあります。これは、ユーザーが納得感を持った状態でシステム導入を行えていないことが原因と考えられます。
経営管理が企業の業績向上につながることを丁寧に説明し、ユーザーの納得感を引き出すことが重要になります。
システムが使いにくい
ユーザーからシステムが使いにくいという不満が上がることも、新システム導入時によく起こる課題です。
このような課題が発生する理由は、人間には現状維持バイアスが働くため、新しいものは拒絶する傾向にあるからと考えられます。ユーザーの早期巻き込みと、実機を用いたトレーニングの実施が解決策とされています。
レガシーシステムから新規経営管理システムへの刷新時に考慮すべきポイント
企業のビジネスが多様化する中で、部門や拠点ごとに異なるニーズを、どのように経営管理システムの要件に反映させていくかを考慮することが重要です。
また、システムの肥大化を避けつつ、どのようにニーズを実現するかは、経営管理システム導入における大きな課題といえます。
参考記事
- レガシーシステムとは?レガシーシステムが問題視される背景と刷新するべき理由 レガシーシステムとは、旧型のシステムを意味します。主に大企業などで昔から使用され続けている汎用コンピュータつまりメインフレームを指すことが多いです。近年では、デジタル社会に適応できるよう、多くの企業がレガシーシステムからの脱却を目指しています。本記事では、レガシーシステムが問題視されるようになった背景。そして刷新が求められる理由、具体的な新システムへの移行方法についてご紹介します。
ERP導入をきっかけに経営精度向上を期待するためには
経営管理は、企業経営の根本部分を担うものです。そのため、経営管理の改善は、企業の業績の向上につながると期待できます。
例えば、SAP社が提供するERPソリューションに代表される最適な経営管理システムの導入が経営精度向上にも寄与します。
経営管理でこれまで用いられることの多かった基幹システムは、管理方法がシステムごとで異なると、システム同士の連携が取りづらいといった課題がありました。
そこで、基幹システムに代わって、システムを統合して一元管理できるSAP ERPなどの経営管理システムの導入が改善策として挙げられます。
まとめ
経営管理とは、企業の持つ経営資源を適切に配分し、業務の進捗を確認していくものです。近年では、経営管理にERP・EPM・BIなどのシステムを導入することが多くなっています。こういったツールを導入することは簡単ではありませんが、業務の可視化・迅速な意思決定・業務の効率化などのメリットがあるため、積極的な活用が求められています。
また、各業務システムや組織に分散している情報を一元管理することで、さまざまな経営管理上の課題を克服できます。
現状の課題に合わせた、最適なERPによる高度な経営管理の実践をご検討ください。
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