不確実な時代におけるサプライチェーン戦略の見直しとは?その方法をご紹介
IT技術の進歩や不確実が増す中で、サプライチェーン戦略の見直しに多くの企業の注目が集まっています。
今回のコラムでは、不確実な時代に求められる、データを活用したサプライチェーンのデジタル化についてご紹介します。
サプライチェーンとサプライチェーンマネジメント
サプライチェーンとは、商品や製品が、それを必要とする人や会社に届くまでの、原材料の調達から生産、在庫管理や配送、販売といった、生産・流通の一連のプロセスを指します。原材料を調達する企業から、部品の製造や組み立てを行う企業、そして、梱包や配送を行う企業や販売小売店まで、サプライチェーンは様々な企業が参加し、受発注や入出荷という取引が発生します。この取引が連鎖(チェーン)するようにつながっていくことから、このプロセス自体をサプライチェーンと呼ばれています。
サプライ(供給)という言葉から、サプライチェーンで重要なのは供給側の活動という印象を受けがちですが、サプライチェーンで発生する一連のプロセスの起点となるのは、消費者や利用者の需要です。いつ、どこに、どれくらいの需要がありそうか、というような情報がなければ、サプライチェーンは十分に機能しません。需要の変動を理解、予測して、供給との間にギャップが生まれないよう、適切な生産体制や在庫を用意するためには、需要と供給双方のデータを、迅速かつ的確に把握し、それに基づいた管理を行う必要があります。この考えを、サプライチェーンマネジメント(以下、SCM)と言います。
今、サプライチェーンマネジメントが注目される背景
近年、ITツールの進化とともに、サプライチェーンの一元管理や、より精度の高い需要予測が可能になってきたことから、SCMが注目されています。たとえば、販売状況や消費者の動向といったデータを活用することで、欠品や過剰在庫を減らし、必要なときに、必要な量を供給することが可能になります。また、AIなどの最新技術の進歩により、データ品質が悪かったり、重複していたりという、従来のSCMの課題を効率的に解決できるようになりつつあります。そして、データ活用が進んだことで、製造業においても、製品に稼働時間や状態をモニタリングするセンサーを取り付け。さらにセンサーで収集したデータから部品の交換や新サービスの提供などの付加価値を提供していくビジネスが増加しています。
消費者側から得られるデータが質量ともに増加する中で、それをどのように供給側の計画に活用するか、SCMの重要性が増しています。新型コロナウイルス感染症の流行により、サプライチェーンが大きな影響を受けたことにより、改めてSCMが注目されるきっかけとなりました。そして、感染症だけではなく、地震や洪水などの自然災害、そして地政学を含めたリスク要因に対して、迅速かつ機敏に対応し、急激な変化に対するレジリエンス(回復能力)を備えたサプライチェーンを構築することが急務となっています。
日本製造業におけるサプライチェーン戦略への取組みと課題
日本の製造業のおいても、SCMの重要性を理解し、IT技術の活用などによりサプライチェーをデジタル化する取組みが進んでいます。
ある消費財メーカー大手は、迅速かつ安定的な供給体制を確保するため、卸業者を通さず自ら小売店に商品を配送する仕組みを作りました。その仕組みを実現するために自社でエンジニアの採用を行い、受注から24時間以内に商品を納品できる体制を実現しました。また、海外売上比率が高い、ある金属メーカーでは、拠点や部門ごとにバラバラになっていたシステムを同一の経営基盤に統合し、見積りから出荷までのプロセス全体を可視化し、生産性の向上や業務の迅速化を実現しました。
しかし、このような先進的な取組みが生まれる一方で、既存のサプライチェーンに課題があることは認識しつつも、レガシー化した既存システムや属人化した業務プロセスが、改善の障害となっている企業も多いのが実態です。例えば、精度の高い需要予測や生産計画を策定するのに必要なデータが入手できない、あるいは、時間をかけて、メールや電話を通じてデータを集めても、鮮度や粒度が異なるために、成果をあげられないケースも見られます。
ERPを活用したSCMの課題解決
部署や拠点単位ではなく、全社的にSCMを改善し、不確実な時代にふさわしいサプライチェーンを構築するためには、ERPソリューションを活用することが有効だと考えられています。
組織全体の情報を一元管理し、業務効率化を実現するERPシステムを導入することで、販売管理から、財務管理、人事給与管理、在庫購買管理、生産管理までの、あらゆる企業活動を連携させ、シームレスかつリアルタイムに管理することを実現します。SCMを含むあらゆる業務データを可視化できるERPシステムがあれば、部材の調達や人材、キャッシュフローというような情報が、社内の部署間で共有されておらず、結果として過剰在庫や欠品、遅延が生じるといった事態を避けることができます。SCM単体ではなく、会社全体の業務効率化という観点から、SCMのデジタル化に取り組むことが、より大きな成果につながります。
現在、ERPシステムと連携できる在庫管理ソリューションも登場しています。例えば米ベルーセン社が提供するクラウドプラットフォームを活用すれば、AI技術を活用して在庫データを可視化し、正確な在庫情報に基づいてサプライチェーンの最適化することで大きな費用削減効果を得られます。
日本において生産人口が先細りとなり、製造・配送・流通などサプライチェーン全体で人材不足が深刻化する中で、ERPシステムや周辺ソリューションを活用することにより、サプライチェーンのデジタル化を図ることが、不確実な時代に求められるサプライチェーン戦略といえるでしょう。
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コロナ禍を乗り越えるサプライチェーン改革データの統合管理とAI技術の活用で製造業の次世代SCMを実現
多くの企業が、長年にわたってサプライチェーンと在庫管理の最適化を図ってきたものの、コロナ禍により大きな打撃を受けました。今後は、在庫管理データを一元的に管理し、人の判断を仰ぐことなくAIによって自動的にサプライチェーンを最適化するソリューションの活用で解決に導くことが必要不可欠です。インテリジェンスを持ったサプライチェーンの最適化をNTTデータ グローバルソリューションズが提案します。 ダウンロード