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サプライチェーンマネジメント(SCM)とは?
SCMが注目される背景とその効果やメリットをご紹介

サプライチェーンマネジメント(Supply Chain Management 以下、SCM)とは、サプライチェーンすなわち、製造する製品の部材調達から設計、製造、そして物流を経て、最終的にエンドユーザーの手に渡るまでの流れを統合的に見直し、全体の効率化と最適化を実現するための経営管理手法です。

昨今の新型コロナウイルスの流行時においても、特に製造業に大きく影響を与え、改めて注目されているSCMについて紹介します。

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INDEX

サプライチェーンマネジメント(SCM)とは

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SCMは、多くの企業が自社ビジネスを構築していくうえで重要視している仕組みの1つです。

サプライチェーンとは

サプライチェーンとは、企業が原材料を入手してから、製品として完成させ、消費者に届けるまでの一連の流れを指します。

サプライチェーンの仕組みには業務、リソース、情報などの要素が含まれており、それらを適切に管理していくことで、自社ビジネスの最適化が可能です。

サプライチェーンマネジメント(SCM)とは

SCMとは、その言葉の通り「サプライチェーンを管理すること」です。

サプライチェーンのなかでは、製造担当者、運送業者、倉庫管理者、小売業者などが連携する必要があります。原材料の調達、製造、商品の配達など、さまざまな業務があるため、コスト削減や迅速な生産を行うためには適切な管理が欠かせません。

SCMが注目される背景

企業活動のグローバル化は、サプライチェーンが世界中に拡大することを意味します。

SCMという言葉は、1980年代前半に米国で生まれました。日本では、2000年代初頭にITを企業経営に取り込む動きがより活発化し、SCMが注目されるようになりました。そして、グローバル化やビジネス環境の変化、そしてブロックチェーンなどの新技術の登場により、SCMが改めて注目されていました。

また、ECサイトの普及により、海外のエンドユーザーをターゲットに事業を越境ECにより拡大する企業も増えています。

言葉や文化、商慣習が日本とは異なる海外企業とのやり取りが増える中、各プロセスの情報を一元的に管理して全体最適を図ることがこれまで以上に重要です。

そして近年は、ビッグデータを活用し、需要や流行の予測を行い適切な製品供給に活用する動きが始まっています。

コンプライアンスの観点からは、商品がどのように製造され、流通したかを世の中に示し証明する説明責任が求められるようになっています。

2011年の東日本大震災では、自動車向けの半導体集積回路の生産途絶により、地震による直接的な被害のなかった他地域での自動車生産も中断するなど、サプライチェーンの寸断により日本全体の生産活動が大きな被害を受けました。

加えて、記憶に新しい新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行初期においては、中国における感染拡大によるグローバルサプライチェーンの分断がもたらす影響が危惧されました。

震災やパンデミックといった非常事態に備え、リスクヘッジのため、調達先を分散化することもSCMの課題といえます。

SCM導入で期待できる効果やメリット

SCMは、多くの企業にとって重要な仕組みです。

SCMの導入により、自社製品およびサービス提供の迅速化や、最適な在庫状況の実現ができます。

加えて、ヒューマンリソースの効果的な活用、経費の削減、リアルタイムな市場ニーズの把握、顧客やサプライヤーとの良好な関係の構築、など多大なるメリットの享受が期待できます。

SCMではビジネスモデル、取り扱う商材、ターゲット顧客などの要素に合わせたプロセスの構築が必要です。

そのため、企業によってプロセスは異なりますが、一般的には以下の工程が含まれています。

調達プロセス

製品を作るためには、原材料を調達する必要があります。

例えば、車を製造する場合、多種多様な金属を取り寄せなければならないほか、特殊な設備のメンテナンスも不可欠です。

調達プロセスでは、原材料の品質やコスト面がとくに重要であり、安定して適切な原材料を入手できる仕組みの構築が求められます。競争優位な製品を提供できる環境を整えることで、ターゲット市場での高い評価につながるでしょう。

生産プロセス

調達した原材料から製品を作る工程です。

品質の高い製品を、低コストで迅速に生産できる環境を構築する必要があります。

重視すべき点は企業によって異なるため、市場のニーズや企業の目的をよく理解したうえで検討することが重要です。

例えば、食料品や電子機器などを販売する企業であれば、大規模なシステムを構築し、大量生産ができる環境を整えるべきでしょう。また、顧客のニーズに合わせた製品開発を重視する企業であれば、カスタマイズのしやすさを意識した生産工程の構築が考えられます。

販売、物流プロセス

顧客に製品を販売して届ける工程です。

商材に合わせて、販売チャネルや最適な配送方法を検討します。

例えば、一般消費者向けの製品を販売する場合、自社のECサイトを構築し、SCMシステムと連携させる形で、購入後に迅速に配送できる体制を整えます。

物流プロセスでは、顧客の希望する日時に配送可能な仕組みの構築も有効です。顧客に直接関係するプロセスであり、最適化によって顧客満足度の向上が見込めます。

返品プロセス

適切な返品プロセスも、SCMにおいて欠かせません。

欠陥のある製品をゼロにすることは難しいため、消費者の返品に応じられる体制を確保しておく必要があります。

返品対応がスムーズにできれば、企業の信頼性を保つことにつながります。

SCMによるデメリット

SCMは重要な仕組みですが、場合によってはマイナスの結果となるおそれがあるため注意が必要です。

失敗する主な理由として、サプライチェーンという仕組み構築の難しさや複雑さが挙げられます。

SCMの難しさ

SCMでは、原材料の調達、商品の生産や販売、包装や配送、品質チェック、在庫管理など、数多くの業務を管理しなければなりません。

広範囲にわたる領域を検討していく必要があり、適切な仕組みの構築は非常に困難といえます。効率的な業務構築のため、きめ細かくプロセスを検討した結果、複雑になりすぎて逆に非効率になってしまうケースも少なくありません。

サプライチェーンの仕組みを適切に構築していないと、企業のリソースを無駄にします。その結果、企業の市場価値を下げる結果に直結します。

最適なSCMを企画・構築するためにも、サプライチェーン構築の難しさをよく理解し、適切なスキルセットと経験を持つ人材を集めたうえで、慎重に検討していくことが重要です。

SCMによる効率化・全体最適化の実現

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過剰な在庫は、企業にとってキャッシュフローの悪化を招きます。その一方で、在庫切れ(欠品)は機会の損失であり、また会社の信用を落とす要因になります。

SCMにより在庫を可視化し、その時々の需要やトレンドに応じて必要なだけの商品を作り、最適な在庫管理を行い、必要な場所に届けることで、市場のニーズに的確に答え、ビジネス機会を最大化することができます。

また、需給の変化に合わせてコストや人員の配置を見直すことで、企業のリソースを効率的に運用することができます。

SAP Integrated Business Planning(SAP IBP)の導入

ある日本のコンビニエンスストア大手は、SAP社が提供するクラウド型のサプライチェーン管理ソリューションSAP Integrated Business Planning(SAP IBP)を導入し、食品原材料廃棄を削減することに成功しました。

SAP IBPはSAP HANAを基盤としており、サプライチェーンに関するリアルタイムな情報をベースに、需要の予測や最適な在庫目標の設定、それらに基づいた販売事業計画の策定などを行うことができます。

また、サプライチェーンを一元管理し、組織全体の連携と最適化によりリードタイムを短縮することで、人気の製品を素早く市場へ供給することが可能になります。

ある日本の大手化学メーカーは、60ブランド1,500点に及ぶ製品を受注から24時間以内に納品できる体制を整えました。

そして、需要予測技術を活用してニーズを先読みしながら、過不足ない製品の供給を実現しています。さらに、モーダルシフトの推進や鉄道輸送の活用など環境に配慮した活動も進めています。

参考記事

サプライチェーンにおけるクラウド技術

SCMを構築するうえで、有効なソリューションとなるのがクラウド製品とのデジタルデータ連携です。

クラウド技術を利用するメリット

クラウドには、コスト削減、ビジネス環境やニーズ変化への対応、サードパーティが提供するサービスの活用など、さまざまなメリットがあります。

課題や変化への柔軟な対応が可能であることが、SCMの構築に有効といえる理由です。

SCMを支援するシステムがカバーする業務領域は、広範囲に及びます。

原材料の入手から、それを加工して最終的に顧客へ届けるまでには、細かい要素も含めると数多くの業務を遂行していかなければなりません。

もし仮にSCMシステムを導入しても、計画通りの効果を得られない。もしくは、変化する顧客ニーズへの対応が必要となる可能性があります。さらに、システムの本格稼働後に、大規模な改修やシステムの入れ替えが必要となった場合、対応が難しくなります。

もし利用しているSCMシステムとクラウドソリューションとのデジタルデータ連携が柔軟であれば、他企業の提供するクラウドサービスとの組み合わせを実現し、世の中に合わせた対応が可能です。

基幹システムとクラウド技術のデジタルデータ連携の実現

SAP製品は、サードパーティ企業が提供するソリューションとの連携も容易にできます。

SAPソリューションを軸として、さまざまな業務課題の解消や、新たなビジネス機会の創出に取り組むことが可能です。

例えば、SAP S/4HANAは間接材管理を支援するソリューション「Verusen(ベルーセン)」と連携させ、在庫管理を強化できます。

間接材とは、原材料以外の購買品のことで、設備常備品、工具、事務用品、販促品などが挙げられます。そうした間接材の在庫管理を最適化するためのシステムがVerusenです。

原材料などの直接材と比べると、間接材管理はやや軽視されることもありますが、多くの企業が適切なSCMを構築していくうえで必要な仕組みといえるでしょう。

VerusenにはAIなどの最新技術が搭載されており、購買業務の効率化を図れます。データクレンジングで品質の高いデータを取り扱うことにより、在庫数の正確な把握や、拠点または部門間の適切な実務連携を実現可能です。

また、クラウドソリューションであるため、導入にかかる時間やコストを抑えられます。

さらに、PoCフェーズでコスト削減効果の検証を行います。期待できる効果をしっかりと算定したうえで導入できるため、投資関連のリスクも抑えられるでしょう。

関連サービス

ブロックチェーンで実現する次世代SCM

現在、サプライヤーなどの社外関係者との連携は、メールや電話、業界EDIなどで行うことが一般的です。

しかしサプライヤーが増えれば、それだけやりとりは煩雑になるため、企業間の連携最適化のためにブロックチェーンを活用する動きが出てきました。

例えば、ブロックチェーンの特徴である耐改ざん性や透明性、各種の秘匿化技術を活用し、発注書や請求書をブロックチェーン上で電子化し、「原本性を持ったデータ」として扱うことが可能です。リアルタイムに取引を完結させ、業務を効率化することができます。

また、秘匿化技術により、サプライヤーは生産能力やリードタイムといった、他社に公開したくない情報を秘匿化したまま共有することができます。

こうしたデータをもとにサプライチェーン全体での最適発注量を計算し、その結果のみを参加企業全員で共有する仕組みです。ブロックチェーンは、モノのトレーサビリティーと不正防止にも大きな効果があります。

耐改ざん性が高いブロックチェーンにモノの加工履歴、移動履歴、受渡履歴を保存することで、異常があればすぐに検出できます。

こうした履歴は複数のサプライヤーをまたいで記録・追跡することが可能なため、何か問題が発生した場合には、その影響範囲を容易に特定できます。

SAP社は、同社のCloud Platform Blockchainサービスを利用し、デジタル元帳システムをIoT、製造、デジタルサプライチェーンソリューションに統合することを目的として、SAPブロックチェーン共同イノベーションイニシアティブを進めています。

日本の経済産業省は、「ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査」で、ブロックチェーンが日本経済に与えるインパクトを67兆円、そしてその半分近くの32兆円がサプライチェーン関連であると試算しています。

新技術で進化を続けるSCMは、企業経営にとって今後ますます重要になっていくとともに、「アフターコロナ」のニューノーマルの中で、グローバルビジネスの最適化とリスクの最小化という命題に対し、よりその役割が期待されるでしょう。

SCMにおけるインダストリー4.0対応の重要性

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SCMを構築する際は、インダストリー4.0に対応していくことも重要なポイントです。

インダストリー4.0とSCMにおける重要性

インダストリー4.0とは、ドイツ政府の産業政策で「第4次産業革命」という意味合いを持ちます。

システム間で通信を行う技術を利用し、顧客から注文された製品の詳細な情報、製造に必要な原材料、在庫の有無、最適な製造ライン、納期、納品場所などを自動で共有し、製造のプロセスをより円滑にします。

大量生産の仕組みを活用しながらオーダーメイドの製品づくりを行う「マス・カスタマイゼーション」の実現が可能です。

例えば、アパレル製品であれば、顧客が希望するデザインデータを注文時にシステムへ取り込むと、そのデータをもとに工場で製造が行われます。デザイン以外にも、素材、サイズ、機能性など、ニーズの高いポイントを顧客がオーダーメイドで注文する仕組みを検討できるでしょう。

企業は大量仕入れ・生産により、原材料のコストを削減しながら、消費者それぞれに合わせた製品づくりができるようになります。

SAPのソリューション

SAPの製品はインダストリー4.0に対応しており、生産プロセスの最適化を実現できます。

主に「製品」「工程」「設備」「人」という4つのポイントに焦点を当て、製造プロセス全体を戦略的に強化していくことが可能です。

ポイント1.製品

製品に対する顧客ニーズの収集や予測を行います。提供するサービスのアップグレードも可能です。

ポイント2.工程

AIや機械学習といった最新技術を活用し、製造の過程でリアルタイムなデータ分析を行います。

さまざまな処理や作業を可視化することで、生産プロセスの最適化につながります。

ポイント3.設備

IoT技術を利用し、製造過程で使用する設備の情報を収集します。

メンテナンスが必要となるタイミングなどの予測が可能です。

ポイント4.人

作業担当者が業務上必要となる情報を入手できる環境づくりを実現できます。

複雑なタスクや想定外の課題にも対処しやすくなり、業務の効率化を図れます。

まとめ

SCMは、企業が自社ビジネスを強化していくうえで不可欠な仕組みです。製造工程における業務を強化することは、企業価値の向上に直結します。

さまざまな業界でニーズが高まっているため、今後もSCMをサポートするソリューションが数多くリリースされるでしょう。

SAP製品はインダストリー4.0に対応しており、生産プロセス全体の最適化を実現できます。SAP製品を効果的に活用しながら、さまざまなビジネス課題の解消や新たなビジネス機会の創出に取り組んでいきましょう。

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関連資料

  • コロナ禍を乗り越えるサプライチェーン改革データの統合管理とAI技術の活用で製造業の次世代SCMを実現

    多くの企業が、長年にわたってサプライチェーンと在庫管理の最適化を図ってきたものの、コロナ禍により大きな打撃を受けました。今後は、在庫管理データを一元的に管理し、人の判断を仰ぐことなくAIによって自動的にサプライチェーンを最適化するソリューションの活用で解決に導くことが必要不可欠です。インテリジェンスを持ったサプライチェーンの最適化をNTTデータ グローバルソリューションズが提案します。 ダウンロード

  • DXで進める間接材(副資材)在庫の最適化とコスト削減

    AI技術を活用した、間接材在庫の調整・管理を効率化するクラウド型ブラットフォームです。本ソリューションは、各拠点の発注に関わるデータを一元管理し、AIによるデータ分析を通じて、在庫の最適化と過剰在庫の無駄を解消します。これにより適切な発注と在庫管理を実現し、コストダウンを図ります。 ダウンロード