業務フローとは?業務フロー作成の必要性と良い流れの作り方を分かりやすく解説
企業や組織の中で働く多くの人なら「業務フロー」という言葉を聞いたことがあるかと思います。
業務フローとは、業務の流れを可視化し、業務の標準化や効率化を実現するために使われています。加えて、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に向けて、既存業務に対する深い理解も必要です。その際、日々の業務を整理するためにも、業務フローは欠かせないものです。
今回のコラムでは、業務フローについて、そして業務フローとERPシステムを組み合わせることで生まれるメリット。最後にERP導入において、業務フローがどう使われているかについて分かりやすく解説します。
ぜひご一読ください。
INDEX
業務フローとは
業務フローとは、特定の業務に対する作業の流れを示すフロー図のことを指します。
業務の始まりから終わりまでの間に、誰(どの部署)が何を担当するのか。もし業務が変わるなら、その変わるタイミングやポイントは何なのか、業務で利用するシステムは何か。その作業順番を図にすることで、それぞれのつながりを示し、業務プロセスを可視化するためのツールのことです。
業務フローが使われる理由(現場レベル)
現場のレベルでは、日々の業務の理解や他者に業務を伝える際に、業務フローを用いることが出来ます。具体例を挙げて紹介します。
ITツール導入
ITツールを活用して業務改善を実現しようとする場合、まずは現在の業務を分析し、何が課題となっているのかを把握することが必要です。
現場の担当者にヒアリングを行い、業務フローで現状を可視化した上で、どのようなITツールがふさわしいのかを議論することが可能です。
新人教育
新人教育の資料として活用することも可能です。
予備知識が無い相手に業務の流れを理解してもらうのは簡単なことではありません。しかし、きちんと整理された業務フローがあれば、新しく業務を開始するメンバーにとっても大まかな流れを理解しやすくなります。
外部ベンダー教育
日々の業務を行っていく中で、部署内の一部の業務を外部ベンダーに委託することもあるかと思います。そのような状況の時に、整理された業務フローがあれば、外部ベンダーへ委託する際の教育をスムーズに実施することが可能です。
結果として、外部ベンダーへの教育の工数や外部ベンダーが業務を覚える工数を削減でき、業務の効率化に繋がります。
業務フローが使われる理由(経営レベル)
経営レベルでは、障害が起きた時の対応や業務削減および効率化などの目的に業務フローを用いる場合が多いです。具体的な例を挙げて紹介します。
障害発生時の対処方法の共有
グループ企業や海外拠点を多数保有し、グローバルに事業を行う企業にとっては、全社で業務フローを標準化することで、障害が起きた際の対応をスムーズに行うことが出来ます。
たとえば、製造業のサプライチェーン上の分断などが不可抗力(紛争や自然災害など)で起きた場合、分断が起きている部門の業務フローを関係部署や関係会社に共有することにより、迅速な対応が可能です。
また、外部に対して分断の原因などや解決策を説明する際にも有効になります。
各部署での業務の把握
業務フローを各部署内で整理をしておけば、どの業務がどの部門によって担当をされているかを可視化することができます。
結果として、業務を効率化するための経営判断をする際、「各部署内の業務のどこが削減対象となりうるか」を効率的に判断することが出来ます。
部署をまたぐ業務の把握
業務のなかには単一の部門だけでなく、複数の部署にまたぐ業務も珍しくありません。
そのような業務に関しても、関係者全員と合意を取ったうえで整理をしておけば、業務ごとの責任の所在がはっきりし、全体の流れのなかで削減対象となるプロセスや効率化できる施策を判断することが出来ます。
良い業務フローの作り方のポイント
業務フローには良いフロートと悪いフローが存在します。ここでは、良い業務フローを作る際のポイントについて紹介します。良い業務フローは、主に以下の条件を満たしています。
業務フローの時系列や条件分岐が分かりやすい
業務フローは、必ず1つの作業から始まります。図の上から下、あるいは左から右、といった流れに沿って、業務がどこから始まり、どのようにつながって完了するのかを分かりやすく表記することが重要です。
業務が複数に分岐する場合にも、どのような条件で分岐するのかを分かりやすく表記していくことが大切です。
異なる工程ごとに図形や線を使い分けている
良い業務フロー図は、複数の図形や線形を使い分けられており、各工程が何を意味するのかを直感的に判断できるような仕組みになっています。
もちろん、図形や線形の種類が多くなりすぎると、全体像をつかむのが難しくなるため、過度の細分化は避けるべきですが、どこを見ても同じに見えるような、無味乾燥な業務フロー図も避けるべきです。
その工程の業務担当者や部署が誰になるのか正確に明記されている
業務フロー上では、その業務をどの担当者、部署が担当するかが明確に明記されることが必要です。業務フローの作成する目的は、「業務の流れを理解できる」ことです。したがって、業務内容良い業務フローとは、どこの部署もしくは担当者が担当をしているのかを明確に記載がされています。
関係者全員の共通理解のもと、作成されている
業務フローとは、特定の業務において、どこからどのように進めば目的地にたどり着くことができるかを示す地図のようなものです。その地図で使われる地図記号や縮尺がバラバラでは、とても実用に耐えうる地図とは言えません。
業務フローの作成に特定のルールはないが、その分、その業務フローを作成・利用する関係者全員が、業務フローで使われる記号やアイコンについて共通認識を持つことが不可欠です。その共通理解は、業務フローの作成初期段階で持つ必要があります。
業務フローとERPの関係
業務フローを自動化・効率化するためには、ERPなどのツールの利用が不可欠となります。ERPを導入する際に、業務フローの作成が必要となる理由について詳しく紹介します。
理由1:デジタル化可能な点の洗い出しのためには、既存業務を理解する必要がある
ERPを導入する最終的な目的は、業務を効率化することです。そのためには、既存の業務を理解すること無しには進めることが出来ません。
業務フローを作成することにより、既存の業務を可視化して整理し、関係部署や担当者と合意を取ることができます。
結果として、ERP導入によってデジタル化が可能な点を可視化することが出来ます。
理由2:ERPを導入することにより変更される業務の理解、共有に必要となる
ERPを導入すると、既存の業務のやり方を変更しなければならない場合が発生します。
たとえば、会計領域の業務に特化したERPパッケージを導入すると、紙で管理をしていた領収書管理などの業務がオンライン上で実施されるようになり、業務に大きな変更が生じます。
その際、変更される業務が「どのように変更されるのか」、「どの担当者の業務がどのように変わるのか」を関係者に共有するためにも、業務フローは用いられます。
理由3:ERP導入されると変更される、外部委託の業務契約変更を可視化する必要がある
ERPを導入すると、企業内部の業務だけでなく、外部委託の業務に関しても変更が生じます。そうなると、工数変更に伴う契約変更などが発生する可能性があります。
こういったケースの場合でも、業務フローが作成されている場合、「どこの工程における作業のどの点が、どの程度の工数に変わるのか」明示的に示すことができ、スムーズな業務移行を実現することが出来ます。
参考記事
- ERPとは?基幹システムとの違いや導入形態・メリットと導入の流れを解説 ERPパッケージとは、企業の基幹業務の統合化を図るERPを実現するソフトウェアです。ERPを導入することで、業務の効率化やコスト削減といったメリットを得られます。もちろんデメリットもあります。本コラムでは、ERPパッケージについてまとめ、導入を実現するためのポイントを分かりやすく解説します。
- SAP ERPモジュールとは?代表的なモジュール役割と相互の関係をご紹介 モジュールとは、ERPパッケージにおける業務分野別にまとめられ、構成された機能群をさします。本コラムでは、SAP ERPにおける代表的なモジュールを例に、モジュールの役割や相互の関係について説明します。
業務フローを活用したERP導入例
業務フローがERP導入でどのように用いられているかの例を紹介します。主にERP導入前、導入後に用いられることが多いです。
例1:グローバル企業での資産管理
一例として、グローバル企業での資産管理をするためのERPを導入する場合でも業務フローは使用されます。
たとえば、製造業のグローバル企業でERPを導入し、各国にバラバラで管理されている資産をグローバル単位で一元的に管理しようとします。
このような状況では、ERPを導入するにあたり、大まかに「各国の資産状況と管理業務理解」→「適切なERPパッケージの選定」→「ERPの機能拡張開発」→「テスト」→「ERP導入」という流れをたどることになります。業務フローは、最初の「各国の資産状況と業務理解」のフェーズで使用されることになります。
このフェーズで、「どういった資産があるのか」、「どの部署でどうやって管理されているのか」、「他国との繋がりはどうなのか」を業務フローによって定義します。
その後、各国の業務フローを用いて、どの業務をERPで管理できるのか、管理出来ないのか、管理できないならばどのように対応していくのか、それぞれ要件を決めていくことになります。加えて、ERP導入後も以前の業務とどこが変更になったのかを業務フローで示すことにより、新人教育や外部ベンダー教育で効率的な業務移行が可能となります。
例2:日本企業の他国への業務拡大
もう一つの例が、日本企業の他国への業務拡大です。
たとえば、現在日本でERPを使って仕事をしている企業が、他国オフィスへ同じERPを導入しようとしているとします。この場合、本格的に業務拡大を行う前に、「他国オフィスの業務を理解する」→「日本と同じERPを導入する」というステップを踏むことになります。
最初の「他国オフィスの業務を理解する」という点において、既存の業務を理解し、関係者と合意を得るために業務フローが用いられます。
まとめ
業務フローとは、特定の業務に対する作業の流れを示すフロー図のことを指します。
業務フローは現場レベル、経営レベル両方で役立たせることが出来ます。現場レベルでは研修や新人教育に役立たせることができ、経営レベルでは障害の対応などで役立たせることが可能です。
業務フローは、現場レベルでも経営レベルでも、業務を理解するために使用されるため、良い業務フローとは、「担当者や担当部門が明確にわかる」、「関係者に合意を取っている」などの条件を満たしています。
実際の現場では、業務フローはERP導入の現場や、経営陣が経営判断をする際に使用されています。
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