ニューノーマルにおけるグローバル経営とは?
新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、世界経済は大きく落ち込みました。大規模な財政出動により、経済活動は回復傾向にありますが、感染先行きの不確実性から、影響の長期化も懸念されています。
今回のコラムでは、ニューノーマルへの対応をサポートするSAPソリューション、特に製造業向けのソリューションについて紹介します。
新型コロナウイルス感染症の経済への影響
新型コロナウイルス感染症の世界的流行と、その対策として実施された経済活動の停止措置により、世界経済に大きな影響が出ています。急ピッチで進むワクチン開発や、各国が実施している景気対策の効果で、経済の見通しは7~9月期から回復軌道に戻りつつありますが、感染先行きの不確実性をはじめとする、失業者の増加、所得の低迷が消費や投資の減少を呼び、影響が長期化することも懸念されています。
国際通貨基金(IMF)が10月に改定した世界経済見通し(World Economic Outlook)は、2020年の世界経済の成長率をマイナス4.4%としています。地域別に見ると、米国やユーロ圏、日本などの先進国、また、中国を除く新興国において、2020年の経済成長率がマイナスとなることが予想されています。一方で、中国は今年唯一1.9%のプラス成長、さらに、2021年には約10年ぶりの高成長率となる8.2%の成長となる見通しです。IMFは、2021年の世界GDPが、2019年を若干上回る水準になると予想していますが、これは中国の成長によるものであり、先進国の経済は、2021年時点でも2019年の水準を回復しない見込みです。
製造業への影響とニューノーマルへの対応
感染拡大初期においては、飲食や宿泊などサービス業への影響が目立っていましたが、パンデミックの長期化に伴い、製造業への影響も深刻化しています。特に、世界中にサプライチェーンが広がるグローバル企業は、世界各地でのロックダウンによって大きな影響を受けています。今後も、ワクチンが普及しない限り、各地で感染が拡大し、封鎖措置がとられる度に、サプライチェーンは寸断され生産が安定しない状況が続きます。生産体制への影響だけでなく、テレワークで業務を行うのが困難な研究開発や、対面販売ができなくなることによる影響も深刻です。
総務省による労働力調査(2020年8月)では、製造業の就業者数が前年同月比52万人減となり、リーマン・ショックの影響があった2010年1月以来、10年7カ月ぶりの下げ幅を記録しました。2020年6月、7月はプラスを維持していた正規雇用についても18万人減となりました。今後、正社員の雇用調整も始まって失業率が悪化していくことが懸念されています。
こうした中、製造業にとっては、サプライチェーンの見直しが急務となっています。感染拡大を防止するためのロックダウン(都市封鎖)により、必要な部品を製造できない、あるいは代替部品を見つけたとしても、物流や人の行き来が遮断されていることで、予定通りに届かないといった理由から、世界各地の工場では大量の仕掛品が発生しました。