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SAP S/4HANAへのマイグレーションとは?

SAP社は2020年2月、基幹系アプリケーション「SAP ERP 6.0」のメインストリームメンテナンス期限を、2027年末まで延長すると発表しました。その後のオプション延長保守サービスは、2030年末まで提供されます。

現行のERPアプリケーション「SAP S/4HANA」へのマイグレーションを進める企業にとっては、従来の期限であった2025年末から2年間の猶予期間が生じることになります。

では、日本国内で2,000社とも言われるSAP ERPのユーザー企業にとって、SAP S/4HANAへのマイグレーションにどのように取り組むべきなのでしょうか。

今回のコラムでは、改めてSAP S/4HANAへのマイグレーションについて解説します。

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INDEX

SAP S/4HANAへのマイグレーションの概要

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詳細に入る前に、SAP S/4HANAとは何か、マイグレーションとは何かという基本的な事項について説明します

SAP S/4HANAとは?

SAP S/4HANAは、SAP社が提供している最新のERP(Enterprise Resource Planning)システムです。SAP S/4HANAは、ビジネスプロセスの最適化と企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進します。

SAP S/4HANAは複雑な業務プロセスを整理し、コスト削減や迅速な意思決定を可能にするための統合的なソリューションです。

ビジネスのさまざまな側面をカバーするモジュールがあり、財務、物流、購買、生産、販売、人事管理などの機能が含まれています。また、IoTやビッグデータ、AIなどの新しい技術の組み込みにも適しています。

マイグレーションとは?

一般的にマイグレーションとは、現行のシステムを新しいシステムに移行することを指します。

現行で運用しているシステムが古くなると、新しい技術や機能のサポートを受けられなくなるので、新システムに移行しなくてはなりません。

マイグレーションには、データ移行、アプリケーションの再構築、設定変更などが含まれます。

システムのマイグレーションは、適正な計画を立て、適切なテストとコントロールを行うことが重要となってきます。また、ダウンタイムを最小限に抑えるために、最新のテクノロジーやツールを検討する必要があります。

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マイグレーションの目的を明確化

国内外の多くのSAPユーザー企業が、「SAP S/4HANA」へのマイグレーションを検討してきました。

しかしながら、「投資対効果を見出すことができない」「どのように進めていけばいいのか」という疑問を持つ企業も多く、必ずしも円滑に検討されていないケースも見受けられました。

こういった背景には、SAP S/4HANAに対する認識が不十分であったことが挙げられます。

SAP S/4HANAは企業全体に影響を与えるマスタ・トランザクションを管理するため、多くの部署の業務と密接に関わります。つまり、SAP S/4HANAは単なるERPパッケージではなく、DXを実現するための統合プラットフォームと考えるべきです。

したがって、SAP S/4HANAへのマイグレーションを検討する際は、単に現行システムを新しいシステムに置き換えるというシステム面だけの発想では不十分です。業務改善のための全社的なビジョンに基づいた視点が欠かせません。

SAP S/4HANA導入によって投資対効果を見出すには、システム的な必要性だけではなく、ユーザーエクスペリエンス、業務のリアルタイム化、AIやIoTを活用したインテリジェント化など、企業のビジネス全体を踏まえたDXの実現を見据えた検討が必要となっています。

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SAP S/4HANAへのマイグレーション方法

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SAP S/4HANAへのマイグレーション方法には、「コンバージョン方式」と「リビルド方式」の大きく2つの方式があります。

コンバージョン方式には「Brownfield」、リビルド方式は「Greenfield」と呼ばれます。

ここからは、それぞれについてメリットとデメリットを解説していきます。

コンバージョン方式「Brownfield」とは

Brownfieldとは、すでに建物や工場が立っている土地を意味する言葉です。したがってBrownfieldでは、基本的なシステム要件はそのままで、システム的な移行のみを行います。

現行システムからの変化が少ないため、現場への影響を最小限に抑えることができるというメリットがあります。システム的な対応にフォーカスするため、相対的に導入期間を短く、低コストで切り替えることができます。

しかし、現行業務の見直しを行わないため、投資価値をどこに見出すのかが困難になってしまうケースも見受けられます。また、SAP S/4HANAの新機能を利用できない場合もあります。

リビルド方式「Greenfield」とは

Greenfieldとは、草が生い茂った手付かずの土地を意味する言葉です。つまりGreenfieldは、新規にSAP S/4HANAのシステムを構築する方法です。

現時点および将来の事業環境の変化を前提に、システム構築と同時に業務プロセスの見直し・刷新を図ることができ、SAP S/4HANAの最新の機能・サービスを全面的に享受することができます。

しかし、業務プロセスの見直しを行うため、導入期間が長く、コストも大きくなるという側面もあります。

アセスメントと検証

SAP S/4HANA移行の最初のステップとして、一般的には現行システムのアセスメントと、それに基づくロードマップの策定、および実機を使った検証(PoC)を行います。

各ステップで現状把握とそれに基づく検討や検証をすることで、後戻りの少ない効率的なSAP S/4HANAへの移行を実現します。

アセスメント結果をもとに、ツール等によるマイグレーションが可能か、作り直しが必要かなどを検討しながら、移行方法やスケジュールなどのロードマップ策定やSAP S/4HANAへの移行概算費用を見積もります。また、アプリケーション部分だけではなく、オンプレミスでいくのかクラウドにするのかなどのインフラ基盤に関しても検討・選定を行います。

この方針をもとに、SAP S/4HANAの実行環境での検証作業(PoC)を行うことで、基本的な動作確認やリスクの洗い出しを行い、より現実的なマイグレーションの方向性や計画を作成します。

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マイグレーションツールの活用

システム的なマイグレーションであるBrownfieldのアプローチを取るとしても、SAP S/4HANAへのマイグレーション作業については、従来のSAP ERPとSAP S/4HANAでは機能や内部のデータ構造が異なるため容易ではないという側面があります。

新規構築を行うGreenfieldのアプローチを取る場合にも、既存のデータのマイグレーション作業は発生します。そのため、いずれの手法においてもツールの活用は必要です。

また、第3のアプローチとして「BLUEFIELD™」というアプローチもあります。これはシュナイダー・ノイライター・アンド・パートナー(以下 SNP)社の「SNP トランスフォーメーションバックボーン(T-Bone)」というツールを使用し、より効率的な移行を行う手法です。

このように、マイグレーションのアプローチと合わせて使用するツールもあわせて検討することが重要です。

いずれの方法を選ぶにせよ、アセスメントや検証作業を通じて得られた分析結果をもとに、ユーザー企業の要件や環境に応じた移行方法を策定していく必要があります。

マイグレーションを行う際の注意点

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SAP S/4HANAに限りませんが、システムのマイグレーションは簡単な作業ではありません。

ここでは、マイグレーションを行うときに注意すべき点を解説します。

十分な計画を立てること

マイグレーションのプロセスは複雑であり、データの移行、アプリケーションの再構築、設定変更など、さまざまな作業を含みます。そのため、事前に綿密な計画を立てる必要があります。

計画を立てる際には、必要なリソース・期間・タスクの優先順位などを考慮することが重要です。

場合によっては、現行システムを止めるダウンタイムをどれだけ縮められるかの検討も求められます。

事前に入念なテストを行う

マイグレーション時にシステムに発生する問題を事前に検知するため、マイグレーション本番前にテストを行い、問題を特定することが重要です。

この場合、できる限り本番に近い条件を整えた状態でリハーサルをすることが求められます。

マイグレーションのリハーサルで問題が発生した場合は、迅速に対応策を検討することが必要です。

失敗に備えたバックアッププランを立てる

どんなに綿密な計画を立てても、マイグレーションが失敗する可能性をゼロにすることは困難です。そのため、失敗した場合には、どのような対応をするかを事前に決めておくことが必要です。

バックアップの作成や復元手順の確認などを前もって行っておけば、緊急事態でも落ち着いて行動することができるでしょう。

「2027年問題」への対応

「2027年問題」とは、2027年末に「SAP ERP 6.0」がサポート終了を迎えることで、現行の基幹システムを使い続けられなくなるという問題です。

ここからは、2027年問題の詳細と各社の対応状況について解説します。

2027年末までの保守期限延長の発表

SAP社は、当初2025年としていた「SAP ERP 6.0」のサポート終了を2027年とする(2%の延長保守料を支払えば2030年まで)と発表しました。

サポート終了までの期間が延長されたことにより、SAP S/4HANAの価値を最大化するための目標設定からアセスメントを経て、より確実で意義のある移行を実現するための時間が与えられたと考えることもできます。

延長の発表を受けて生まれた時間を活用し、自社のDXを実現するために最適なSAP S/4HANAへのマイグレーション方法を検討する機会にするべきだと考えられます。

SAPユーザーグループのマイグレーション計画の現状

既存のSAPユーザーは、どのタイミングでどのようにSAP ERPをアップグレードするのか、もしくは他のシステムに切り替えるのかといった判断を早期にする必要があります。

米国のSAPユーザーグループによる最近の調査結果では、SAP S/4HANAへのマイグレーションをまったく計画していない顧客数はゼロでした。また、ドイツ語圏SAPユーザーグループの最近の調査によると、49%以上の顧客が今後3年以内でのSAP S/4HANAへの移行を計画しています。

SAP製品のユーザー会であるジャパンSAPユーザーグループ(JSUG)が、2019年12月に発表した調査では、従来のERPからSAP S/4HANAへのマイグレーションについて「済み」、「実施中」、「検討中」のいずれかと回答した企業の割合は、2018年の65%から2019年は80%超に増えているとのことです。

このように、日本だけでなく世界中のSAPユーザー企業がSAP S/4HANAへのマイグレーションを検討しています。

まだ、検討に着手できていない企業はなるべく早くスタートさせる必要があるでしょう。

まとめ

SAPユーザー企業は、SAP S/4HANAへのマイグレーションを検討する中で、システム・業務の2つの視点から投資対効果を検討する必要があります。

マイグレーションは簡単な作業ではなく、綿密な準備が必要です。

保守の期限が2027年まで2年延長されたため、より確実で意義のあるマイグレーションができるように各企業はしっかりとした検討を進めることが求められます。

関連資料

  • SAP S/4HANA®Cloud移行「i-KOU!®」アセスメント&PoCサービス

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  • DXを実現するSAP S/4HANAマイグレーション

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