SAP S/4HANAの特徴
インメモリデータベースの採用
SAP S/4HANAは、コア技術としてインメモリデータベースである「SAP HANA」を採用しています。
インメモリデータべースとは、メインメモリ(主記憶装置:RAM)上にデータを展開し、処理を完結させるデータベースの総称です。インメモリ上のデータは、ストレージ内のデータよりも読み書きを高速に行うことができます。インメモリデータベースでは、変更・削除・追加などのデータ処理をすべてメインメモリ上で完結できるため、オンディスクデータベース(SSDやHDDで読み書きを行う従来型データベース)に比べ、数百~数万倍の処理速度を実現できます。
一般的にメインメモリは揮発性メモリです。つまり、電源オフと同時にデータが消えてしまいます。
しかし、インメモリデータベースでは電源オフ時にストレージへのデータ保存処理を追加することで、データの消失を回避します。このことからインメモリデータベースは、「メインメモリが持つ超高速処理」と「ストレージが持つデータの永続性」を両立させた新世代のデータベースと言えるのです。
ゼロレスポンスタイム
SAP S/4HANAはデータベースとしてインメモリ技術を全面的に採用しているため、従来のERPソリューションに比べてデータ処理速度が圧倒的に向上しています。
SAP社は、これを「ゼロレスポンスタイム」と呼称しています。
TCO(総保有コスト ** )やストレージコストの削減
レスポンスタイムが大幅に改善することで、ビジネスプロセスの見直しが容易となります。
エンドユーザーのオペレーションが少なくなり総保有コストが削減される他、データサイズが小さくなることでストレージコストを削減できます。
同一プラットフォームでの分析・レポーティング
従来のSAP ERPソリューションでは、経営戦略に結びつくような情報を取得する仕組みを、ERPとは別に構築したDWH(データウェアハウス)等で実現していました。
SAP S/4HANAでは同一プラットフォームで分析とレポーティングを行うことが可能になり、ビジネスに欠かせない情報を迅速に取得できます。
クラウド対応
SAP S/4HANAはオンプレミスやクラウド(プライベートクラウドとパブリッククラウド)の運用プラットフォームを自由に選択することができます。
オンプレミスの場合、SAPユーザーは自社のデータセンターでオンプレミスバージョンをホストすることになります。
SAP社はオンプレミス製品には年単位のイノベーションサイクルを設けていますが、ユーザーはアップグレードを強制されることはありません。
プライベートクラウドは、基本的にはオンプレミスの導入を安全なプライベートクラウドでホストするオプションです。
パブリッククラウドとは、具体的にはSaaS(Software as a Service)を意味し、SAPやサードパーティーベンダー(「AWS(Amazon Web Services)」や「Microsoft Azure」など)がホストして管理し、四半期単位でアップグレードされるものです。
選択肢が増えたということは、逆に言えば、ユーザー企業はオンプレミスかクラウドか、自社にどちらが合っているのかを検討し、選択しなければならないということでもあります。
こうした特徴の中でも、特にSAP S/4HANA専用のデータベースであるSAP HANAの高速データ処理能力は大きな技術的特徴であり、クラウド環境とSAP HANAによるSAP S/4HANAの活用が、企業のビジネスに俊敏性とデジタルのプロセスをもたらすと期待されています。
インメモリ型データベースであるSAP HANAにより高速データ処理を実現すると同時に、データベースのチューニングコストやデータマートの開発・運用コストを大きく低減できるというメリットがあります。
例えば、世界最大のスーパーマーケットチェーンであるウォルマートでは、SAP HANAの導入により、3年分(2,000億件以上)のPOSデータにリアルタイムでアクセスできるようになり、多種多様な分析が行うことが可能となりました。また、SAP HANAのデータ圧縮機能とデータマート、インデックスの削減により、データベースのサイズを46.5TBから5.7TBまで圧縮することに成功しました。
新ユーザーインターフェイス(User Interface)「SAP Fiori」の標準採用
SAP S/4HANAでは、ECC6.0までのSAP GUIから「SAP Fiori」へと標準ユーザーインターフェイス(以下 UI)が変更されています。
SAP Fioriは、JavaScript・CSS・HTML5をベースとしたUIフレームワーク「SAP UI5」によって作られたまったく新しいUIです。SAP UI5はマルチデバイスを想定しているため、PC以外のデバイスからでも基幹システムへ柔軟にアクセスすることができます。
SAP Fioriが標準採用されたことで、タブレットやモバイル端末からも企業内の資源をリアルタイムに確認することが可能になりました。
また、SAP Fioriではメニュー表示にも変更が加えられています。
SAP GUI時代は、機能ベースの網羅的なメニュー配置であったため、すべてのメニューの中からドリルダウン形式で目的の機能を探し出す必要がありました。これに対してSAP Fioriでは、ユーザーロールに紐づくメニュー表示に変更されています。
ユーザーは自身のロールに基づいたメニューのみを操作すれば良いため、操作性の向上につながっています。