サイロ化とは?サイロ化によって生じる課題と解決策をご紹介
サイロ化とは、組織や情報が孤立し、共有できていない状態を指します。データを活用した経営が重要視されるなか、多くの企業がIT環境のサイロ化に直面しています。
IT環境のサイロ化は、企業のデータ活用や、DX実現への大きな障害となりかねせん。DXによって社内の業務効率を上げていくためには、企業全体でデータを共有・連携・統合することが不可欠です。
そこで本記事では、サイロ化の原因や、それによって生じる課題。そして、サイロ化を解消するための対策について解説します。
INDEX
サイロ化とは
サイロ化とは、組織や情報が孤立し、共有できていない状態のことです。
サイロ化には2つの種類があります。
そもそもサイロとは、農産物や飼料、工業原料といった各種物資を貯蔵するための円筒形の倉庫を指します。複数のサイロは同じ場所にまとめて設置されることが一般的ですが、それぞれのサイロは独立しており、内部で物資が混ざりあうことはありません。
このサイロという言葉を企業に置き換えると、企業内の部署や部門がそれぞれ孤立して業務を行っており、部署間でコミュニケーションや情報共有がなされていない状況となります。
サイロ化が起こっている組織は、作業効率の低下をはじめ、情報伝達がスムーズに行われない、プロジェクトの進捗が滞るなどの問題が発生します。
なぜサイロ化が起こるのか
サイロ化が起こる原因を3つ紹介します。
縦割りの組織構造
サイロ化が進む原因の1つが、縦割りの組織構造です。
縦割り組織は、部門・部署の責任やミッションが明確になるため、特定の目的を達成するための行動に集中しやすいというメリットがあります。しかし、組織として成果を出すためには、部門を横断した協力体制が不可欠です。
例えば、営業部門と生産部門が協力せず、バラバラに業務を進めてしまえば、生産計画が混乱し、納期を守れず、結果、会社全体の信用を失うことにつながります。
縦割り組織でサイロ化が起きてしまうのは、コミュニケーション不足や管理方法の違いによって、部門間の連携がとれていないためです。物理的に他の部門から区切られた場所で、孤立して業務を行っているうちに、それぞれの部署や部門で独自の業務プロセスや用語が生まれ、サイロ化がさらに加速します。情報共有しないことを良しとする文化が根付いている場合もあるでしょう。
90年代に、単一の企業体だった事業部門を8つの部門に分割した大手電気機器メーカーは、各部門で情報の抱え込みや競い合いが生じ、企業全体としての戦略を描けなくなった結果、収益力が大きく低下しました。
アプリケーションやシステムの設計
企業で導入しているシステムやアプリケーションが十分に連携できていないことも、サイロ化が進む原因です。
部門間やシステム間での連携を想定せずに、システムを構築することによってサイロ化が起こります。個別で導入したシステムをあとから連携させる際、連携元と連携先のシステム同士の仕様に合わせたデータの加工や、システムの改修が必要となる場合があり、連携のミスが発生しやすくなります。
また、あるアプリケーションで蓄積されたデータを、別のアプリケーションでは活用できないといった問題も起こりうるでしょう。特定の業務や部門内で使いやすいシステムであっても、連携できていなければ、組織全体の業務効率を下げることにもなりかねません。
利用するシステムや、アプリケーションの種類やデータ量が増えるにつれて、サイロ化は深刻化する傾向があります。
部署ごとの業務プロセスに最適化されたシステムの利用
部署ごとの業務プロセスに最適化されたシステムを利用することも、IT環境のサイロ化につながるおそれが大きいです。
各部門で、会計や人事、生産管理といった業務ソフトウェアを導入する際に、自分たちの業務に合わせたカスタマイズや最適化を行うことがあります。それぞれのソフトウェアが個別最適化された結果、データを共有することが困難になり、データサイロが発生します。
孤立した組織構造、分断された情報、そして、個別に最適化され分断された業務システムによって生み出されたサイロを解決するには、組織の文化を変え、データを一元管理する仕組みの導入が必要です。
企業における「サイロ化」の問題
企業の経営活動において、データの活用がますます重要となるなか、多くの企業がIT環境のサイロ化に直面しています。
以下は、サイロ化によって起こりうる問題です。
以下でそれぞれ詳しく解説します。
データを活用できない
データを活用しようとしても、データ収集・分析・統合に多大な時間と手間がかかるため、貴重なデータを有効活用する機会を失ってしまうおそれがあります。
AIやIoTを使ったデータ解析を行うためには、統合したビックデータを得る必要があります。データがサイロ化されており、1つのフォーマットにまとめられていなければ、ビックデータを処理するAIを活用できません。
スピーディーな意思決定ができない
経営や組織運営では、データに基づいた意思決定を行います。
情報のサイロ化が起こっていると、データを集めるために複数の部門に依頼しなければならないため、判断のスピードが遅くなってしまうでしょう。経営の意思決定が遅れることで、顧客のニーズやトレンドに対応した提案ができず、ビジネスチャンスを逃してしまうリスクもあります。
また、各部門から集めた情報を手動でまとめる必要も出てくるため、多大な作業時間や人件費がかかるほか、ヒューマンエラーのリスクも生じます。
作業効率が低下する
データ統合の仕組みがあれば、日々のデータ入力や日報作成などの単純作業を自動化することが可能です。
しかし、サイロ化が起こっていると、作業の自動化や連携ができず、別々の管理システムに同じ内容を入力するといった作業の重複が発生してしまいます。
その結果、作業効率や生産性の低下につながるおそれがあります。
顧客満足度が低下する
顧客満足度を向上させるためには、さまざまなチャネルから顧客情報を収集・分析し、アプローチに活かすことが重要です。
顧客が求めている商品やサービスが、商品開発やマーケティング部門に共有されていなければ、サービスの展開も遅れてしまいます。
コストが増加する
部門間の意思統一を図るために会議や情報共有の場が増え、無駄なコミュニケーションコストが生じます。
各部門で複数のシステムをバラバラに構築する場合、情報共有が難しくなるだけではなく、システム運用のコストや効率面で弊害が生まれ、無駄なライセンス費用がかかることもあります。
サイロ化を改善するメリット
以下では、サイロ化を改善することで得られるメリットを3つ紹介します。
業務効率化と生産性向上
サイロ化された情報が統合されると、それまで見えていなかった業務の無駄を特定できます。定型業務を自動化するなどの改善策を講じることで、無駄な作業が減り、業務全体の効率化を図れます。また、重要な基幹業務に十分なリソースを投入できるようになるため、生産性向上にもつながるでしょう。
企業のデータ価値を高めることができる
サイロ化を解消することによって、企業内に散在しているデータの統合が可能です。データを可視化できるだけではなく、利活用方法の検討も可能となり、データの価値が高まります。
適切な経営判断ができる
サイロ化を解消してビックデータの解析や処理が可能になると、市場の変化や顧客の動向を予測し、いち早くニーズを察知できるようになります。収集したデータを活用すれば、新たなビジネスアイデアを獲得するチャンスにもつながります。
サイロ化に対する改善策
以下では、サイロ化に対する改善策を3つ紹介します。
新しいシステムに集約する
データのサイロ化に対する有効な方法は、データの統合を目的としたソフトウェアの導入です。
例えば、SAP社が提供するSAP S/4HANAのようなERPを導入し、サイロ化を解消するとともに、リアルタイムな情報にどこからでもアクセスできる環境を構築できれば、情報共有が滞ることを防ぐことが可能です。
Customer Data Platform(CDP)でデータを統合する
顧客情報の一元管理を行いたい場合には、CDP(Customer Data Platform)の導入も解決策の1つです。CDPは、特にマーケティング視点でデータを統合し、活用するために有効です。
組織を再編する
縦割りの弊害が目立つようであれば、組織を再編し、トップダウンで企業文化の変革に取り組み、部門間の連携や情報共有を促進するような文化を醸成する必要があるでしょう。職域を超えたトレーニングの提供も、部門間の壁を取り払う手法として有効です。
参考記事
- ERPとは?基幹システムとの違いや導入形態・メリットと導入の流れを解説 ERPパッケージとは、企業の基幹業務の統合化を図るERPを実現するソフトウェアです。ERPを導入することで、業務の効率化やコスト削減といったメリットを得られます。もちろんデメリットもあります。本コラムでは、ERPパッケージについてまとめ、導入を実現するためのポイントを分かりやすく解説します。
SAPソリューションを活用したIT環境の統合
SAP社のソリューションを活用することで、IT環境の統合が可能です。IT環境を統合し、サイロ化の解消に役立つSAPソリューションを2つ紹介します。
SAP S/4HANAとは
SAP S/4HANAは、SAP社が2015年にリリースされた第4世代のERPソリューションです。
SAP S/4HANAをデジタルコアとして採用し、周辺ソリューションを連携させることにより、サイロ化した機能やデータを統合できます。ソフトウェアやアプリケーションが連携できない、データを集約し分析できないといった問題を回避できます。
また、SAP S/4HANAは、インメモリ型の高速データベースシステムであるSAP HANAを採用している点が特徴です。
SSDやHDDなどのストレージではなく、インメモリにデータを保持することで、処理の高速化を実現します。
SAP Business Technology Platformとは
SAP Business Technology Platformは、SAP S/4HANAをコアに、SAP社が提唱するコンセプト「インテリジェントエンタープライズ」を実現するためのアプリケーション開発のプラットフォーム(PaaS)です。
DXを推進するためには、全社横断的なシステム連携やデータ活用が欠かせません。
SAP Business Technology Platformの活用によって、さまざまなSaaS製品との連携や拡張が可能となり、変化するビジネス環境にもスピーディーに対応できます。
参考記事
- SAPとは SAPは、「経営・業務の効率化」や「経営の意思決定の迅速化」を実現することを目的に、多くの企業で導入されているITソリューションです。このITソリューションにより、企業の経営資源である「人・モノ・金」の情報を一元で管理ができ、そして経営の可視化を実現できます。本コラムでは、SAPについて詳しく解説をしていきます。
- SAP S/4HANAとは SAP S/4HANAとは、SAP社が提供する次世代のERPです。現在利用しているSAP ERPの保守サポートが2027年終了するにあたり、何をすべきか。そしてSAP S/4HANAの特徴を交えながら、分かりやすく解説します。
まとめ
サイロ化の原因や、それによって生じる課題、サイロ化を解消するための対策について解説しました。
企業の経営においてデータの有効活用が求められるなか、多くの企業がIT環境のサイロ化に直面しています。データを活用し、DXを実現するには、企業全体でのデータ共有・連携・統合が不可欠です。
新しいシステムへの集約、CDPを活用したデータ統合、組織の再編成などの対策を行い、サイロ化を解消しなければなりません。その手助けとなるのが、SAP社のソリューションです。
SAP S/4HANAをデジタルコアとして採用し、周辺ソリューションを連携させることで、サイロ化した機能やデータを統合できます。また、SAP Business Technology Platformを活用すれば、さまざまなSaaS製品との連携や拡張が可能となり、変化するビジネス環境にスピーディーに対応できます。
自社のIT環境におけるサイロ化の原因を把握し、適切な対策を講じていきましょう。
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