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IFRSとは?グローバル展開を検討する日本企業のための
国際会計基準への対応方法を解説

現在、欧州連合(EU)においては、国際会計基準(IFRS/International Financial Reporting Standards)の適用が上場企業に対して義務となっています。また、EU域外であっても、EU企業と取引をする場合は、IFRSまたはIFRSに類する会計基準を求められたため、IFRS導入が世界規模で進行しています。

この国際会計基準の導入に対して、日本企業がどのように対応したらいいのかについて今回のコラムで解説していきます。

ぜひご一読ください。

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INDEX

国際会計基準(IFRS)とは

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近年、国際会計基準(IFRS)の対応を検討する日本企業が増加しています。しかし、聞いたことがあっても、実際にはIFRSがどのようなものかよく分からない方もいるのではないでしょうか。

そこで本セクションでは、IFRSの基礎情報について解説していきます。

IFRSとは

IFRSは、ロンドンを拠点とする民間団体である国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board 以下 IASB)によって設定される会計基準です。

1980年代以降、企業のグローバル化が進むなかで、会計基準の統一を目指すという目的から生まれました。2005年にEU域内の上場企業で適用が義務化されたことで利用が拡大しました。

今では国際会計基準(International Financial Reporting Standards 以下 IFRS)は、約120の国と地域で採用されています。

アメリカや日本のように、先進国のなかでも完全にIFRS適用が行われていない国もありますが、世界全体としてはIFRSの適用拡大が進んでいます。

IFRSとは

ここからは、IFRSの主な特徴について3点に絞って解説します。

1つ目の特徴は、IFRSが世界標準であることです。

日本の会計基準は日本独特のルールに沿って作られており、グローバル標準の会計基準としては通用しません。

一方、IFRSは世界共通基準という前提で作られているため、グローバル対応ができます。

そのため、世界中で事業を行うグローバル企業にとって、会計基準が本社と海外の子会社で同じであれば、経営管理が容易です。また、海外から資金を調達する際、統一の基準があることによって、誤解や認識の齟齬を回避できます。

2つ目の特徴は、IFRSでは原則主義を採用していることです。

日本の基準では、細かくルールが決められています。

例えば、「20万円以上であったらXXの処理をする」など、具体的な数値基準設定が存在します。

一方、IFRSで採用されている原則主義では、原則に従って会計処理を各企業が判断しなければなりません。

h4 class="mb0 title-style-6">3つ目の特徴は、IFRSでは貸借対照表を重視する点です。

日本における会計基準では、期間あたりの収益を表す損益計算書が重視されています。

一方、IFRSにおいては、貸借対照表の重要度が高く、長期的な企業の価値を投資家がより正確に把握することが可能です。

この違いは、利益に対する会計の考え方が、伝統的な収益・費用アプローチから資産・負債アプローチに移り変わっていることに由来するといわれています。

日本におけるIFRSの浸透状況

経済規模の大きな国でありながら、日本でIFRSは完全に導入されていません。この背景に迫っていきます。

日本のIFRS対応として取られたのは、自国の会計基準を維持しつつ、徐々にIFRSとの違いを少なくしていく、「コンバージェンス」のアプローチです。

2007年、日本の会計基準委員会(ASBJ)とIASBの間で、IFRSにコンバージョンさせる方針が「東京合意」にて決まりました。その後、2009年に「我が国における国際会計基準の取扱い(中間報告)」が公表され、IFRSの任意適用が始まりました。

2015年から上場企業での義務化が予定されていましたが、東日本大震災の影響、米国の対応遅れにより見送られ、現在も義務化には至っていません。

一方で、2021年3月期からトヨタ自動車株式会社が米国会計基準からIFRSに移行するなど、IFRSを適用する国内企業は着実に増えています。

2022年8月時点で、東証に上場する258社がIFRSを適用(予定含む)しています。

日本政府はIFRSの任期適用企業数の拡大を目指しているため、IFRSを採用する企業はますます増えていくでしょう。また、会計に精通した国際的な人材の育成や、日本国としてのIFRSに対する意見の発信が重要であると日本政府は考えており、今後のIFRS対応に注目が集まっています。

IFRS導入のメリット・デメリット

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ここからは、IFRSを導入するメリットとデメリットについて解説します。

IFRS対応のメリット

海外拠点との財務情報の統合

IFRS導入の大きなメリットとして、海外にある子会社と財務に関する情報の統合が容易になることが挙げられます。

日本の本社が日本の会計基準を使い、海外にある子会社がIFRSを使っている状態では、財務諸表を作るプロセスが非効率的となり、業績管理が困難です。

しかし、IFRS導入後は、海外子会社を含めた全ての拠点で同一の会計基準を利用するため、財務諸表作成の効率化や、業績の正確な把握と比較が可能になります。また、世界中が同じ会計基準を使用していれば、拠点間のコミュニケーションも取りやすくなり、事業拡大や不正防止にもつながります。

このように財務情報を統一化することで、グローバル経営の効率化を図れます。

海外からの資金調達

海外投資家へ説明しやすくなり、国外からの資金調達が容易になることもIFRS導入のメリットです。

日本の会計基準に則った財務諸表では、海外投資家がほかの国際企業と比較することが困難です。そのため海外から資金調達を行う際には、IFRSに慣れた海外投資家向けに日本の基準とIFRSの差異を説明する必要があります。

しかしIFRSを導入すればあらためて説明する必要がありません。財務諸表が比較しやすくなることで、企業の現状を誤解なく海外の投資家に伝えることが可能になります。

結果、資金調達の選択肢を増やすことができるでしょう。実際に、トヨタ自動車株式会社は、IFRS適用について「資本市場での財務情報の国際的な比較可能性の向上などが目的」としています。

IFRS対応のデメリット

導入にコスト・時間がかかる

IFRSに対応するには、システムの変更や社員教育などが必要です。

外部アドバイザーやシステム改修に多額のコストと多くの時間がかかることを予期しておく必要があります。

導入にコスト・時間がかかる

運用時の事務コストの増加

IFRS導入後は、事務負担が大きくなるおそれがあります。

IFRSは原則主義を採用しており、日本のようにはっきりとした基準がないため、判断の理由を注記しなければならず、財務諸表作成時に大きな負担がかかると予想されます。

また、IFRSは英語で書かれているうえ、更新も多いため、事務処理に追加コストが必要になる可能性も高いです。

参考記事

IFRSと日本の会計基準の違い

IFRSと日本の会計基準における、具体的な違いについて紹介します。

日本の会計基準との大きな違いの1つは、企業の買収価格と帳簿上の価格の差である「のれん代」の扱い方です。

日本基準は、毎年一定額を償却して費用計上するため決算で利益が目減りします。

一方、IFRSでは毎期評価をして価値が下がれば減損するルールになります。

ソフトバンク株式会社や武田薬品工業株式会社といった企業が、IFRSを採用し、積極的にM&Aを仕掛ける企業に適した会計基準といえます。

さらにIFRSでは、持ち合い株の価格変動は損益計算書(PL)に影響せず、貸借対照表(BS)のみに反映させることができます。

米国会計基準では、2017年より持ち合い株の評価損益をPLに反映させることが義務付けられ、同基準を採用しているトヨタ自動車株式会社は19年3月期に約3,400億円の損失を計上しました。持ち合い株の多い日本企業にとっては、業績のブレを抑えられるIFRSは米国会計基準よりも使いやすいものといえるでしょう。

このように、企業の業務形態によっては、日本の会計基準よりもIFRSを採用したほうがよいケースもあります。特に、グローバル展開している大手企業におけるIFRSの採用が増加中です。

IFRS対応を実現するSAPソリューション

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ここからは、IFRSを企業に適用するうえでの課題と、IFRS対応に適したソリューションを紹介します。

IFRS対応するうえでの課題

IFRSには多くのメリットがあるとはいえ、これまで利用してきた会計基準からIFRSに切替えるのは容易ではありません。IFRS適用における具体的な課題について見ていきましょう。

まず、IFRSは原則主義のため、解釈や実務の指針が細かく定められた日本基準と異なり、説明責任を果たすためにも大量の注記を付記しなければなりません。

また、単体の財務諸表として、日本の会計基準に則った財務諸表が日本企業には必要になります。そのため、複数の会計基準に対応できるシステムが求められます。

さらに、IFRSの規定自体も頻繁に改訂されるため、その都度対応するために事務コストが発生することも課題の1つです。

事務コストを最小化するには、IFRSの改訂に対応できるシステムを導入する必要があります。

SAP社とは

IFRS対応に向けたシステム更新を検討するうえでは、ドイツのソフトウェア企業であるSAP社のソリューションが候補として挙げられます。

SAP社は、ERPシステムの領域をリードするグローバル企業です。企業向けソフトウェアの開発において長い歴史を持ち、会計システムの領域を得意としています。

最新のERPパッケージである「SAP S/4HANA」は世界中の大企業で使用されており、グローバル会計についての知見が豊富です。

SAP社のソリューション例

SAP社は、円滑にIFRSを実現するための様々なソリューションを提供しています。

例えば、SAP社の連結会計ソリューションであるSAP Financial Consolidationは、単一の会計基準に基づく連結だけでなく、複数の会計基準の連結を実現するための様々な機能を備えています。連結の範囲やルール、また外貨換算レートや適用する勘定体型を任意に組み合わせることができるため、多様な連結処理を一つのシステム基盤で実現することが可能です。

また、「IFRS Starter Kit」というテンプレートを利用することで、データ収集から連結処理、レポーティングまでを迅速に行うことができます。同様に、収益管理ソリューションであるSAP Revenue Accounting and Reportingは、IFRSを含む複数の会計基準に対応しています。

IFRSを含む、複数の会計基準をサポートできるソリューションを活用すれば、日本会計基準や米国会計基準から、IFRSに移行する際の、移行期間の管理も容易になります。

そして、SAP社は、IFRSの改定に合わせたソリューションも提供しています。

例えば、SAP Contract and Lease Management は、2019年1月1日から適用となったリース会計の新しい基準(IFRS16 リース会計)に対応するソリューションで、 SAP S/4HANAの会計機能の一部として提供されています。

SAP S/4HANA内で、データが自動連係されるため、IFRSに対応しつつ、リース資産をリアルタイムな会計評価と将来キャッシュフローの把握が可能です。

グローバルに活動する企業にとって、経営管理の効率化や、海外からの資金調達という観点からIFRSの重要性が高まっています。

こうしたソリューションを活用してIFRSを迅速に適用し、そのメリットを最大限に享受しましょう。

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