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SAP HANAとは?
SAP HANAのメリットや機能・歴史についても詳しく紹介

「SAP HANA」は市場投入から10年以上が経過し、SAP社のERPパッケージ「SAP S/4HANA」の動作基盤として利用されております。2019年にクラウドサービス版が発表されるなど、さらなる進化を遂げています。

今回のコラムでは、SAP HANAの概要をはじめ、機能やメリット、SAP社のERPパッケージとの関係性などを詳しく解説します。高速データ処理や高度なデータ分析、画期的なアプリ開発などを可能にするSAP HANAについて、理解を深めていきましょう。

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INDEX

SAP HANAとは

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SAP HANAとは、SAP社が提供するメモリ・カラム型の超高速データベースシステムです。一般的なデータベース機能に加え、カラム型のインメモリデータベースである点が大きな特徴といえます。

従来型のデータベースとは

従来型のデータベースは、搭載されたハードディスクにデータを保持しながら動作するように設計されています。データ量が増えてくると、処理したデータをハードディスクに書き込んだり、変更したりするのに時間がかかることが課題でした。

インメモリ型データベースとは

一方、SAP HANAに採用されているインメモリ型データベースは、データをコンピューターのメモリ上に展開しながら動作します。

ハードディスクからデータを読み出して処理する従来型に比べて、メモリ上で直接処理するほうが応答速度を速くできるため、従来のデータベースよりも高速にデータ処理を行うことができるのです。

インメモリ型データベースの仕組み

SAP HANAではSAP 2018年のアップデートリリース「SPS03」以降、インテルの不揮発性メモリ「Intel Optane DC persistent memory」に対応し、データベースの一部を不揮発性メモリに配置することが可能になりました。

データベースのデータが不揮発性メモリに配置されたことで、サーバーダウン時もメモリ上のデータを失うことなく、即時に再起動して処理を継続できるようになりました。

SAP HANAは、容量あたりの単価がDRAMよりも安いとされる不揮発性メモリを利用しており、より安価に大容量のメモリをサーバーに搭載することが可能となったことで、インメモリデータベースを実現しています。

カラム型データベースの仕組み

SAP HANAのデータベースの設計思想は、従来のロー型(行指向)ではなくカラム型(列指向)となっています。カラム型のデータベースにすることで、データを圧縮し、高速な読み込みを実現しています。

一方データを更新する処理においては、従来のトランザクション処理に向いているロー型のデータベースの方が処理スピードは早いです。

SAP HANAでは、データ更新専用のメモリ領域を設けることで、従来のロー型よりもトランザクション処理に弱いという問題を解決しています。

こうした技術を活用したSAP HANAは現在、SAP社のERPパッケージSAP S/4HANAの動作基盤として利用されています。

参考記事

SAP HANAのおもな機能

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SAP HANAには豊富な機能が備わっていますが、ここではおもな機能として以下5点を解説します。各機能を正しく理解し、メリットを最大限に享受しましょう。

  • インメモリデータベース
  • カラム型データベース
  • 統合型プラットフォーム
  • データ保管
  • 非構造化データへの対応
  • インメモリデータベースによる高速な処理

    インメモリデータベースでは、メモリ上でデータの管理や処理を行います。HDDやSSDなどの記録装置からデータを読み出す一般的なアプローチよりも、スピーディーにデータを処理できます。

    カラム型データベースによる効率的なデータ圧縮

    SAP HANAはトランザクションの書き込みを重視した従来のロー型(行指向)のデータベース設計ではなく、データ集計や分析に強みを持つカラム型(列指向)のデータベースです。

    データ格納方式にカラム型を採用したことで、冗長性のあるデータの圧縮に優れた性能を発揮します。アクセスするデータを減らすことで、高速な分析が可能になりました。インメモリデータベースとあわせて、高速処理を維持しつつメモリも節約できるという大きなメリットがあるのが特徴と言えます。

    統合型プラットフォーム

    SAP HANAはデータを格納する単なるデータベースではなく、データを統合的に管理するプラットフォームと言えるでしょう。

    データアクセスだけでなく、分析処理やアプリ開発なども可能なため、ビジネスの高速化と最適化をデータベースからアプローチできるツールとして注目を集めています。

    全てのデータをメモリ上に持つインメモリコンピューティングを基盤に、リアルタイムに配信されるデータを人工知能の一種である機械学習テクノロジーに基づいて活用できます。こうすることで、切り替えが早いインサイト主導型のアプリケーションも作成できます。

    データ保管

    SAP HANAは、データ保管に特化したデータウェアハウスはもちろん、データ処理と同時にデータ分析を行う「オンライン分析処理(OLAP:Online Analytical Processing)」も実行できます。

    従来のERPでは、業務ごとにテーブル構造を分けてデータを管理していましたが、SAP S/4HANAでは、ロー型とカラム型のデータ構造を統合し、オンデマンドで集計・分析することで、ありとあらゆるデータを任意の切り口で分析できるようになっています。

    非構造化データへの対応

    SAP HANAは、特定の構造を持たない「非構造化データ」も扱える点が強みです。

    非構造化データとは、加工されていない生のデータのことで、メールや文書、画像、動画、音声、ログデータなどを指します。

    たとえばSAP HANAでは、音声データをわざわざ文字に起こす必要がありません。あらゆる保存形式のデータから必要な部分をスピーディーに抽出できるため、素早くビジネスに活用できます。

    SAP HANAの4つのメリット

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    SAP HANAがもたらすメリットは、おもに以下のとおりです。それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。

  • 経営の意思決定スピードを向上
  • 高速なデータ処理
  • システムの最適化
  • クラウドとオンプレミスの両方に対応
  • 経営の意思決定スピードを向上

    SAP HANAがもたらすメリットの1点目としては、経営の意思決定スピードの向上が挙げられます。

    SAP HANAのERPシステムでは、経営判断に必要なデータをスピーディーに処理・分析できるため、検討のための時間を十分に確保しつつ、意思決定速度を向上させることができます。

    今後デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)化が一層進むにつれ、企業の保有する販売データやマーケティングデータ、顧客の詳細データなどもより膨大になっていくことが予想されます。SAP HANAでは分析スピードや開発スピードが高速化されるため、SAP HANAのERPシステムは経営に必要な判断や決裁、意思決定をスピード化できるツールになりうるといえるでしょう。

    高速なデータ処理

    SAP HANAのメリットの2点目は、高速なデータ処理です。

    SAP HANAは、オンライン分析処理(OLAP)とオンライントランザクション処理(OLTP)を統合することで、従来のデータベースシステムよりも大幅な高速化を実現しています。そのため、大規模なアプリケーションにおいても1秒未満で問い合わせに応答し、待ち時間を短縮することができるでしょう。

    こうした高速なデータ処理が実現したことによって、リアルタイムなデータ処理が可能になりました。

    システムの最適化

    SAP HANAのメリットの3点目は、システムの最適化です。

    SAP HANAによって、部署や支社ごとに運用していた業務システムを連携または代替して一元管理します。それによってさまざまなデータを1つのプラットフォームで管理することができるようになるため、社内システム全体の最適化も進められます。

    また、最適化を通じて不要なリソースを洗い出し、無駄なコストや手間を削減することもできるでしょう。

    クラウドとオンプレミスの両方に対応

    SAP HANAのメリットの4点目は、クラウドとオンプレミスの両方に対応していることです。

    オンプレミス環境とクラウドサービス、どちらにも導入できるため、自社の運用方法や担当者のスキル、ニーズに合わせた柔軟なシステムを構築できます。

    たとえば、オンプレミスとクラウドを部分的に使い分けるハイブリッド型として利用もでき、現場に適した形での導入・運用が実現できます。加えて、高いセキュリティ要件が求められるシステムにおいても、オンプレミスとクラウドを併用したシステム構築が可能なSAP HANAであれば、柔軟に対応できるでしょう。

    SAP HANAとSAP S/4HANAの関係性

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    具体的にSAP社のソリューションを検討していく上では、データベースとしてのSAP HANAと、SAP HANAを用いたERPであるSAP S/4HANAおよびSAP S/4HANA Cloudの関係性を理解しておくと良いでしょう。

    ここでは、用語と関係性について解説をしていきます。

    SAP HANAは、ERPで用いられるデータベース

    SAP HANAとは、これまで解説したようにSAP社が提供する入出力が高速なインメモリ構造で、データの読み込み処理を得意とするカラム型の「超高速データベースシステム」のことを指します。

    SAP S/4HANAは、オンプレミス型のERPパッケージ

    SAP S/4HANAは、高速のデータベースシステムであるSAP HANAを採用したオンプレミス型のERPパッケージシステムです。これまでSAP社のERP品だったSAP ECC6.0が、2027年に保守サポート終了予定となっていることから、後継製品となる次世代ERPとしてSAP社が開発を進めてきたERPです。

    SAP S/4HANA Cloudは、クラウド型のERPパッケージ

    SAP S/4HANA Cloudは、オンプレミス型のERPパッケージ同様、SaaS形式で提供されているSAP HANAを搭載したERPパッケージシステムです。

    前身となるSAP ECC6.0やオンプレミス版のSAP S/4HANAでは、従来の機能をベースにした設計のSAP GUIで動作していました。

    一方SAP S/4HANA Cloudでは、直感的に利用しやすいユーザー中心に設計をされたユーザーインターフェースであるSAP Fioriが導入されました。マルチデバイスに対応し、ユーザーが機能やデータ構造を意識することなく操作できる仕様になっています。

    SAP社のソリューションについて検討する際には、データベース、オンプレミス版のERP、クラウド版のERPのどれを指しているのか、関係者で認識の齟齬がないよう注意すると良いでしょう。

    参考記事

    SAP HANAの歴史

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    SAP社のソリューションや設計思想を理解するためには、歴史を理解することも大切です。最後に、SAP HANA登場から現在に至るまでの歴史について見ていきましょう。

    SAP共同創業者であるハッソ・プラットナー(Hasso Plattner)によって2000年代半ばから進められていたミッションを基盤として、SAP HANAは2010年に誕生しました。その後、2019年11月にスペインのバルセロナで開催された「SAP TechEd Barcelona 2019」で「SAP HANA Cloud」を発表し、2022年には利用ユーザー3万1,000 社超えを達成することになります。

    SAP HANA Cloudはその名の通り、クラウドサービスです。SAP社のパートナー企業が、PaaSとしてSAP HANAを提供するサービスは従来から存在していたものの、SAP社がSAP HANAをDBaaS(Database as a Service:データベース・アズ・ア・サービス)として提供したのは初めてのことで、注目を浴びました。

    SAP HANA Cloudは、「SAP Data Warehouse Cloud」と「SAP Analytics Cloud」を合わせてSAP Cloud Platformを土台とした「SAP HANA Cloud Services」として展開されています。

    SAP HANA Cloud Servicesは構造化/非構造化データやオブジェクトデータなど、新たなデータモデルや処理タイプなどにも対応しています。さらに、データ仮想化やレプリケーションの技術によって、データストアからデータを移動することなく、高速なアクセスができます。

    従来、SAP HANAは動作に大量のメモリを要していましたが、SAP HANA Cloud Servicesでは、データの仮想化機能などを利用してメモリの容量を抑えつつ、多様な格納先のデータを透過的に利用できます。

    また、インメモリ以外の手段も組み合わせて、利便性を維持したまま価格を抑える工夫もされています。

    たとえばSAP S/4HANA Cloudの管理機能では、データの用途や利用頻度によって格納場所の使い分けが可能です。頻繁に利用するデータはインメモリに、分析用データはSAP社が以前買収した米サイベースのデータベース「IQ」を利用した「Relational Data Lake」に格納する、アーカイブ用途にはディスクストレージ拡張「HANA Disk Store」を利用する、などの使い分けができます。

    SAP HANA Cloudは、インメモリ以外の手段も組み合わせて大容量のデータをより便利に管理できるようにすることを目指しており、オンプレミスとクラウドを組み合わせることで、柔軟にキャパシティを拡張できるでしょう。

    まとめ

    本コラムではSAP HANA について解説しました。

    SAP HANAによって大容量データをより効率的に管理・活用できるようになります。また、オンプレミスとクラウドを組み合わせて柔軟にキャパシティを拡張することも可能なため、企業ニーズや環境に合わせて柔軟に活用することができるでしょう。

    SAP HANAの特徴の理解が深まれば、SAP S/4HANAなどのERP導入検討における情報収集もしやすくなります。SAP HANAについての深い情報収集や、SAP S/4HANAへの移行や運用を見据えたメリットやコスト、リスクの分析が必要な場合は、当社で提供している「i-KOU!® SAP S/4HANA 移行アセスメント・PoCサービス」も検討してみてはいかがでしょうか。2027年の「SAP ERP 6.0」のサポート終了を前に「i-KOU!®」の需要は高まっており、同サービスの受注件数(見込み含む)は、2020年より、年々、倍増しています。

    こちらのページでは、上記で提供しているサービスメニューの解説動画を公開しています。どなたでも閲覧できるので、ぜひご覧ください。

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