ERPコンサルタントとは?その役割と必要性について分かりやすく解説
「ヒト・モノ・カネ」は、企業経営の要となる三大資源です。これらの資源を無駄なく活用して生産性を向上させるためのシステムが「ERP(Enterprise Resources Planning、企業資源計画)」です。財務、会計や人事、給与、生産や物流など企業の主要な業務情報を一元管理し、業務の効率化と意思決定の迅速化のためにERPの導入が加速しています。「基幹システム」であるERPを導入することを決定すると、ERPの導入や活用に関する知識や経験が豊富な専門のコンサルタントや企業の支援のもとにプロジェクトを進めるのが一般的です。
そこで本コラムでは、ERP導入の成否に大きく影響を及ぼす“コンサルタント”や“コンサルティング”について解説します。
ERPシステム導入前のコンサルティング
まず重要なのは、ERPの導入によって解決するべき課題や効果などの目的を明確化することです。ERPはシステムであるため、あくまで目的を達成するための手段です。そのため、現在の課題を明確にするとともに、ERPによってどの部分を解決するのか、ERP以外の手段でどの部分を解決するのかを明確にすることが重要です。
ERPコンサルタントは、ERPによって解決できる手段やそれを実現するための前提条件などを、企業の現状分析と合わせて行い、全体像の整理とERPの適切な位置づけ、導入計画とフェーズごとの期待する効果などを整理します。
次に、システム的な視点でも現状分析と課題解決の方向性を整理します。たとえば、ERPで扱われるデータは、最終的には会計データに結びつきます。そのため、受発注をはじめ、生産、流通や物流、プロジェクト管理などあらゆる機能の構築にあたって、単に記録するだけではなく、会計的な整合性についても意識する必要があります。計上や引当のタイミングが一致していないと正しい会計データを出すことができないためです。このように、各業務プロセスだけではなく、会計に関する知見も含めたERPコンサルタントによる財務会計対応・予算管理・内部統制を意識した業務フロー立案・改善提案など、業種・業態を問わず広範囲の支援がコンサルティングに求められます。
このような支援を通じ、ERPコンサルタントは、企業の経営状況を深く理解した上で、現状の課題を把握します。そして、その企業に必要なITシステムの導入とあわせて業務改革(業務改善)・経営改善に関する提案をします。最近では、働き方改革の一環として、業務効率化を目指すケースも増えてきています。
システム導入にあたってのコンサルティング
ERPコンサルタントは、“ERP導入プロジェクト”のプロジェクトマネージャーとして、開発から導入までを統括します。また、稼働後のフォローを支援するケースもあります。
昨今、SAP社のソリューションに代表されるERPを導入する企業が増える中、コンサルタントは製品に特化した知見を基にした導入支援だけではなく、導入後のバージョンアップ対応や追加システム開発、他ITシステムとの連携など、システム連携やライフサイクルを含めたコンサルティングを依頼されることも多くあります。
また、ERPシステム導入成功の鍵を握るのが ”プロジェクトの管理” です。適切なプロジェクト管理ができなかったが故に、システムの導入が中断・失敗という結果に陥ってしまうケースも多々あります。特に、ERP製品の導入・運用は高額なため、経験やノウハウを持ったコンサルティングサービスが重要です。
ERPコンサルタントに必要な経験やスキル
ERPコンサルタントは、SAP製品をはじめとする各種ERP製品に関する知識のほか、クライアントが属する業界の知識も重要です。ただし、それだけでERPコンサルタントして活躍できるわけではありません。
より上流の管理者として、経営全般の課題解決スキルと経験が求められるのがERPコンサルタントです。クライアントの要望を分析し、客観的なデータに基づいた提案力が必要です。
また、ERPの主力パッケージであるSAPソリューションの強みのひとつがグローバル対応です。最近では、日本企業が海外拠点を設ける際に、国内で構築したSAPシステムをグローバルロールアウト(海外展開)するケースが増えています。
そこで、グローバルロールアウトにおける、SAP導入のコンサルティングを手掛けることもあります。こうしたケースでは英語などの語学力はもちろん必要ですが、海外展開をする上で展開する地域に関する知識や経験もコンサルタントに求められます。なお、クライアントがSAPソリューション以外の製品も比較検討しているケースもあります。どの段階からコンサルティングを依頼されるかにもよりますが、コンサルタントは、他社のERP製品に関する知識や経験が豊富であれば、製品選定などの段階から支援することもあります。
今後のSAPコンサルタントに求められること
日本においても多くの企業で使われているSAPソリューションですが、いま課題となっていることの一つが、2027年に迎える「SAP ERP」のサポート終了です。
これまでこの製品を使用していた企業は、SAP S/4HANAへの移行を検討開始しています。既存のSAP ERPを新たなシステムにリプレースするための対応は必至となり、ERPのコンサルタントの需要は拡大します。
しかし、ここでSAPコンサルタントに求められるのは、単なる既存のSAP ERPのマイグレーションのロードマップだけではありません。新たなアーキテクチャを持つS/4HANAのメリットを最大限に享受するためには、既存のERPの位置づけや考え方を見直す必要もあります。
SAPコンサルタントは、これを機によりERPを経営のコアとして位置づけ、拡張性の高いインフラとしてデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)を推進するためのリーダーとして支援することが期待されています。
ぜひこのような視点でパートナーとしてのERPコンサルタントをご検討下さい。
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