CRMとは?
CRMが生まれた背景とその機能を分かりやすくご紹介

CRMは「Customer Relationship Management」の略で、日本語では「顧客関係管理」を意味します。

顧客情報を統合的に管理し、良好な関係性を長期的に築き上げ、サービスや製品の利用を継続的に促す経営手法です。

本コラムでは、CRMが生まれた背景とCRMが持つ代表的機能を分かりやすくご紹介します。そして、CRMとERPの連携によって生まれるメリットについても解説します。

ぜひ、ご一読ください。

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INDEX

CRMが生まれた背景とは

購買履歴や嗜好といった顧客データを利用してキャンペーンを展開したり、提案する商品を決定したりするには、当然ながら詳細な顧客の情報が必要です。

顧客を管理するという考え方は、昔から存在します。たとえば、江戸時代には掛売りの内容を取引先別に記入する「大福帳」という管理帳簿がありました。そして、江戸時代から時を経て、現代の経営コンセプトであるCRMは、1990年代に米国で誕生しました。

その背景には、顧客ニーズが多様化。また、消費者が自ら情報を取得できるようになったことで、不特定多数の人を対象とする従来のマス・マーケティングが行き詰まりを迎えていました。

そこで、顧客を特定し、それぞれの顧客の属性に合わせたマーケティングを行う「One to Oneマーケティング」など、企業が顧客視点に合わせるという手法が主流になっています。「One to Oneマーケティング」を実現するために、顧客の情報を正確に、そして継続的に管理する必要性からCRMが生まれました。

日本においては、バブル経済が崩壊し国内市場が冷え込む中で、顧客情報の活用を通じて競争力を高めることが求められた、という背景もありました。

なおCRMという言葉が広く知られるようになったのは、1998年に米国のコンサルティング会社アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)が出版した、「CRM-顧客はそこにいる」という書籍がきっかけです。

同書ではCRMを「ITシステムを利用し顧客データの分析をもとに顧客を理解し、インターネットやコールセンターなど新しいチャネルを使用して顧客との関係を深めるマーケティング手法」と定義しています。

CRMの主な機能

本セクションでは、CRMの代表的な機能をご紹介します。

顧客情報管理機能

CRMの顧客情報管理機能とは、単に名刺の情報を記録したり、取引履歴を保存したりするだけではありません。こうした基本情報に加え、担当者や決裁者の氏名、各人の連絡先、コンタクトの回数、問い合わせ内容、商談状況や内容など、細かな情報を記録します。

こうした情報を活用することで、いつどのように顧客にアプローチすべきかを的確に知ることができ、営業機会を見逃す可能性が低くなります。

フォローアップ機能

CRMにはイベントやセミナーへの参加状況を記録したり、メール配信機能によってフォローアップメールを送信したりする機能もあります。

加えて、顧客情報から自社に大きな利益をもたらす優良顧客を抽出し、上位顧客を対象とした特別なキャンペーンを行ったりすることができます。

顧客分析機能

CRMで管理された顧客情報を分析することで、誰が「優良顧客」なのか。またその顧客はどのような商品やサービスを好むのかを把握し、それに合ったマーケティングを展開することができます。

優良顧客を見つける手法の1つとして、RFM分析という分析手法があります。これは、Recency(最終注文日からの経過日数)、Frequency(現在に至るまでの購入回数)、Monetary(合計購入金額)で顧客をランク付けする方法です。

既に取引回数も多く自社に利益をもたらしてくれる優良顧客と良好な関係を築くためには、同じ商品やサービスを提供し続けるのではなく、他社では手に入らない、あるいは、通常の顧客には提供されない商品やサービスを提供することが有効です。

そして、CRMに蓄積された情報から顧客の潜在的な心理を理解し、自社へのロイヤルティと顧客満足度が上がるポイントを見つけ出すことで、従来よりも無駄なく、より的確に、顧客生涯価値(Lifetime Value:企業にとってある一人の顧客が生涯にわたって企業にもたらした価値の合計)を高めることが可能です。

カスタマーサポート機能

最後に、CRMの重要な機能としてカスタマーサポートがあります。

これは一般的に、新規顧客に商品を販売するには既存顧客に商品を販売する時の5倍のコストが必要になる(1:5の法則)といわれます。そのため、新規開拓よりも既存顧客が離反する確率を下げることの方が効果的で、顧客離れを5%改善すれば、その利益率は25%改善される(5:25の法則)といわれています。

商品購入後やサービス利用後のカスタマーサポートの充実度は、顧客の意思決定に大きな影響を与えるため、既存顧客の離反防止にはカスタマーサポートの質を高めることが不可欠です。顧客が購入した商品や過去の問い合わせ内容、また、同じ商品を購入した顧客から良くある問い合わせ内容などの情報を利用することで、素早く、そして高品質なカスタマーサポートを提供することができます。

CRMとERPとの連携で生まれるメリットとは

CRMを単体で運用するよりも、ERPなどの基幹システムとシステム連携することで、より効果的に運用することができます。

CRMとERPを連携させ、顧客情報と経営情報が統合された環境を構築することで、組織全体で顧客情報を一元管理し、顧客満足度と生涯顧客価値の向上に役立てることができます。また、連携により情報入力の簡素化や業務効率の向上といったメリットも生まれます。

たとえば、SAP社のCRMアプリケーションスイート「SAP Customer Experience」は、同社が提供するERP「SAP S/4HANA」と連携して動作するため、契約管理や在庫引当、出荷/配送といった業務データと、顧客のコンタクト情報や過去の支払情報といった各種情報を紐づけることができます。

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    近年の技術進歩により、CRMにもAIを活用し、購買行動などのデータから顧客の行動を予測したり、先回りして提案したりすることも可能になってきました。AIとビックデータの登場により、CRMを活用した「One to Oneマーケティング」は更に進化を続けています。

    また、モバイル端末で利用可能なCRMシステムの登場により、いつでも、どこでも顧客とのつながりを持てる環境が実現し、CRMの更なる利用拡大につながっています。

    米ガートナー社の調査によれば、2025年には800億ドルを超えるという予想もあります。顧客を囲い込み、自社の商品やサービスの利用を促進するためのCRMの重要性はますます高まっています。ぜひ一度、顧客との接点と管理を考えてみませんか。

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